日本IBMは2001年4月24日,同社が開発したUNIX OSの新バージョン「AIX 5L for POWER V.5.1」を5月9日から出荷すると発表した。また同日,中規模システム向けサーバー機「IBM eserver pSeries 620」と「同660」を発表,4月27日から出荷することも明らかにした。

再コンパイルだけでLinuxアプリが動く
 AIX 5L for POWER V.5.1(以下,AIX 5L)は,同社のサーバー機「IBM eserver pSeries」と「RS/6000」で稼働する。64ビットCPUに対応し,最大32CPUのSMP(Symmetric MultiProcessor)や256Gバイトのメイン・メモリー,最大1Tバイトのファイルを作成できるジャーナリング・ファイル・システム「JFS2」をサポートする。

 また,Linuxのアプリケーションとソース・コード・レベルでの高い互換性を持つのも特徴。Linux用に開発したアプリケーションのソース・コードはAIX 5L上で再コンパイルするだけで,ほとんどが動作する。ただし,リトル・エンディアンに依存するなど,特定のCPUアーキテクチャに合わせたソース・コードを持つアプリケーションは,そのままでは正常に動作しない。

 UNIXはそもそも移植性の高いOSであり,従来からAIXとLinuxの間にはソース・コード・レベルである程度の互換性があった。AIX 5Lでは,ソース・コード・レベルの互換性をさらに上げるため,Linuxが持つAPI(Application Programming Interface)のサポートやLinuxでよく使われるツールやライブラリをAIX上に用意した。すでに,Linuxでよく利用されているデスクトップ環境「GNOME」や「KDE」など多数のアプリケーションを動作確認している。同社は,Linux用の豊富なアプリケーションをAIXに取り込むことで,AIXの利用価値を高めたいと考えている。ユーザーにとっても,多数のLinuxアプリケーションをAIX上で動かせるほか,Linuxのスキルが生かせるメリットがある。

 AIX 5Lは現在,同社の64ビットCPU「POWER」用のみだが,インテルの64ビットCPU「Itanium」が出荷され次第,Itanium用も提供する予定。なお,Itanium用のAIXは同社やインテル,米SCOなどが参加したインテル製64ビットCPUにUNIXを移植する計画「Project Monterey」の成果であるという。

最大6CPU対応の新サーバー機
 IBM eserver pSeries 620と同660は,いずれも64ビットCPUであるPOWERシリーズの「RS64IV」などを搭載する。最大6CPUまでのSMPに対応し,6CPU時は668MHz動作のRS64IVが搭載可能。同CPUは電気抵抗が低く,高集積が可能な銅配線技術とCPU内の静電気の発生を抑えるSOI(Silicon On Insulator)技術を利用している。620と660は,両技術を利用するCPUの採用により発熱と消費電力を抑えている。また,メモリーの可用性を高める「チップキル・メモリー」も採用しており,同社によれば,従来に比べてメモリー・エラーを1/100に抑制できるという。

 620は,最大HDD容量が509.6GバイトでPCIスロットを10基持つ。660は,ラック・マウント型のサーバー機で最大HDD容量が36.4Gバイト。620と660ともメイン・メモリーは最大32Gバイト。価格は620が270万7300円から。660が329万9500円から。

 また,同社は,次世代のPOWERプロセッサを搭載するサーバー機を2001年後半に出荷する予定であることを明らかにした。同サーバー機はハードウエアの資源を論理的に分割する技術「LPAR(Logical PARtitioning )」を利用できるという。

武部 健一=ニュース編集部)