日本IBMは2001年4月12日,TCP/IPネットワーク上にありながらSCSI接続した装置として運用できる新ネットワーク・ストレージ製品「IBM TotalStorage IP Storage 200i」を発売した。SAN(Storage Area Network)やNAS(Network Attached Storage)とは異なる新しいネットワーク・ストレージ技術「iSCSI」を採用。iSCSIは,データとSCSIコマンドをIPパケットとして伝送する技術で,既存のIPネットワークに接続できる。製品は6月29日に出荷を開始する。タワー型の「モデル100」とラックマウント型の「モデル200」の2モデルを用意。接続可能なサーバOSはWindows NT/2000,Linux。モデル100のディスク容量は109GB~218GBで,価格は299万9500円から。モデル200のディスク容量は218GB~1.7TBで,価格は601万9500円から。
●米Ciscoとの共同開発技術を採用
iSCSIは,米IBM社と米Cisco Systems社が共同開発した技術。専用のスイッチ(Fibre Channel)を使用するSANとは異なり,汎用のIPルーターやLANスイッチを使用する。そのためiSCSIはネットワーク上でのストレージ運用が容易であるほか,IPネットワーク上であれば,社内・社外を問わずネットワーク・ストレージを構築できる。価格も「容量1TB当たり約3000万円するSAN装置に対して,iSCSI装置は容量1TB当たり1000万円程度に抑える」(日本IBMの和田昌佳ストレージ・システム製品事業部長)という。また,専用スイッチなしにIPネットワークに接続するストレージとしてはiSCSIのほかにNASがあるが,「iSCSIはNASとほぼ同じ価格帯だが,NASよりもデータ伝送能力が高い」(和田事業部長)としている。
NASよりもデータ伝送能力が高いのは,データ伝送の仕組みが異なるため。NASではデータを伝送する際に,SCSIプロトコルをいったんファイル・アクセス・プロトコル(CIFS,NFS,HTTP,FTPなど)に変換する。それに対してiSCSIはSCSIプロトコルをそのまま使用する。「ファイル・アクセス・プロトコルへの変換過程を省ける分,iSCSIの方が高速になる」(和田事業部長)というのだ。またiSCSIは今後,(1)1個のファイルを複数の装置に配置する,(2)データのミラーリングを行う---といったNASにはない機能を備える計画だ。もちろん,ファイル・アクセス・プロトコルを使うファイル・サーバーとしてiSCSI製品を使用した場合,NAS製品との違いはほとんど出ない。和田事業部長は「iSCSI装置は,ファイル・アクセス・プロトコルを使わないデータベース・サーバー用のストレージとして運用した場合,NAS装置よりも有利である」と説明する。
●「価格的には中堅企業にも魅力的」
和田事業部長によれば,今後CRM(Customer Relationship Management)システムなど大量のデータを扱うシステムが普及するにつれ,データベース・サーバー用のネットワーク・ストレージの需要は増加するという。現在,その分野ではSANが主流であるが,「高額であるとしてSAN製品導入をためらうユーザーに対して,iSCSI製品を売り込む」(和田事業部長)という。なお,今回発売したIBM TotalStorage IP Storage 200iは,10/100/1000BASE対応のLANインタフェースを持ち,「データ伝送速度はSANの毎秒2Gビットにはかなわないが,価格を考えれば中規模の企業ユーザーに対して十分魅力的である」(和田事業部長)としている。また同社では同日,SAN装置をNAS装置として運用できるSAN用NASゲートウエイ製品「IBM TotalStorage NAS Storage 300G」を発売した。同製品を通じてIPネットワークに接続したSAN装置は,ネットワーク上ではNAS製品として運用できる。使用できるファイル・アクセス・プロトコルは,CIFS,NFS,HTTP,NetWare。1ノードモデルの「モデルG00」は4月12日の出荷,価格は692万7500円から。2ノードモデルの「モデルG25」は4月27日出荷で,価格は1409万500円から。