シリウスは2000年10月24日,JavaをベースにしたWebアプリケーション・サーバー(APサーバー)「JRun Server 3.0J」の出荷を開始する。同製品は,米Allaireが開発した「JRun Server 3.0」の日本語版である。今回,「英語版は日本でも既に約1800サーバーの出荷実績がある」(シリウス ネットビジネス事業部 営業部 部長代理 松永智氏)JRun Serverの日本語版を出荷するとともに,JSP(JavaServer Pages)の開発ツール「JRun Studio 3.0」を投入し,ミドルレンジのシステムにJRunを売り込んでいく姿勢を鮮明にした。

 JRun Server 3.0Jは,J2EE(Java 2 Platform,Enterprise Edition)に対応し,EJB(Enterprise JavaBeans)1.1やJSP1.1,サーブレット2.2などの実行環境を備える。製品はDeveloper版,Professional版,Enterprise版の3種類がある。Developer版は,開発者向けに無償で提供するもの。Professional版は,JSPとJavaサーブレットだけを使ったアプリケーションを動かすための製品。Enterprise版はProfessional版よりも大規模なシステムを想定し,EJBやJTS(Java Transaction Server)などもサポート。さらに,ロードバランシングなどを行うためのクラスタリング機能も備える。価格は,Professional版が19万8000円(1CPU)から,Enterprise版が120万円(1CPU)からである。「JRun Studio 3.0」の価格は12万8000円で,出荷は2000年12月ごろになる見込み。

 JRunの"売り"は,「ツールとしての使いやすさと,TPモニターなどの資産を引きずっていないために製品の作りがシンプルであること」(米Allaire Product Marketing ManagerのDan Murphy氏)だという。例えばJSPの開発では,データベース検索などの汎用的なカスタム・タグをライブラリ化して提供することで,短期開発を支援する。さらにJRun Studio 3.0を利用すれば,ビジュアルな環境でJSPとJavaサーブレットを開発できる。またJRun StudioはHTMLだけでなく,XML(eXtensible Markup Language)やWML(Wireless Markup Language)を使ったアプリケーションの開発にも利用できる。

 JRun Server(Professional版)とJRun Studioを組み合わせ,JSPとJavaサーブレットを使ったミドルレンジのシステムを安価,かつ迅速に構築できることがJRunの大きな特徴である。「米国での出荷状況を見ても,Professional版とEnterprise版の比率は5対1」(Dan Murphy氏)というように,JSPとJavaサーブレットだけでカバーできるシステムは多い。米BEA SystemsのWebLogic Serverなどの他製品がEJBを前面に出して大規模システム構築を狙うのに対し,JRunはミドルレンジ・システムの短期開発市場に的を絞ることで差別化を図る。

 また,米Allaireは独自のタグを利用した「ColdFusion」というAPサーバーも提供しているが,Javaプログラムを呼び出すためのタグを使えば,JRunと連携させることができる。ColdFusionも短期開発に注力した製品であるため,JRun Server(Professional版)とJRun Studioの組み合わせは,いわばColdFusionの「Java版」ととらえることもできる。

 もちろん,米AllaireもJSPとJavaサーブレット以上,つまりEJBを必要とするシステムに対応するために,JRun ServerにEnterprise版を用意している。さらに,「2001年6月をめどに開発中のJRun Studio 4.0ではEJBの開発機能も取り込む計画だ」(Dan Murphy氏)。今後は,EJBの世界でも"使いやすさ"などの特徴を打ち出せるか否かが,JRunの大きな課題となってくる。

(森山 徹)