日本アイオナテクノロジーズは,Webアプリケーション・サーバーの新版「iPortal Application Server(iPAS) v1.2」を2000年9月中に出荷することを明らかにした。まずはスタンダード版から出荷し,「1~2カ月以内にはエンタープライズ版も国内市場に投入したい」(日本アイオナテクノロジーズ 取締役 製品戦略担当 斉藤信也氏)との考えだ。エンタープライズ版は,スタンダード版の機能に加え,オブジェクト・レベルのロード・バランシングやフェイルオーバー機能などを備える。エンタープライズ版の国内出荷は,このバージョンが初めてになる。

iPASは,同社のCORBAプラットフォーム「Orbix 2000」の機能をベースにしたAPサーバー。iPASとOrbixの両者を連携させることでCORBA2.3(一部3.0の機能を含む)に準拠したアプリケーションが開発できる。iPAS自身は,J2EE(Java 2 Platform,Enterprise Edition)仕様に準拠したJavaベースのAPサーバーである。iPAS v1.2は,従来のEJB(Enterprise JavaBeans)に加え,JavaサーブレットおよびJSP(JavaServer Pages)に対応した。これにより,サーバー・サイドJavaを利用したHTMLクライアント向けのアプリケーション構築を容易にしたことが特徴だ。

J2EEへの完全対応は,いまや各APサーバー・ベンダーが掲げる共通の旗印だ。例えば,iPlanet E-コマース・ソリューションズ ジャパンが2000年10月に出荷開始する「iPlanet Application Server 6.0 日本語版」の目玉はJ2EE完全対応である。JMS(Java Message Service) 1.0やJavaMail 1.1,RMI over IIOPなどへの対応を追加し,J2EE完全対応を大きくアピールした。また,日本オラクルもOracle Application Server(OAS)の後継製品である「Oracle Internet Application Server 8i(Oracle iAS)」の出荷を9月27日に開始する。9月に出荷するのはStandard Edition R1.0だが,R1.0.2(出荷は2000年1月を予定)では,Servlet 2.2,JSP1.1,EJB 1.1など最新のAPIに対応させてくる。

このように,J2EEへの対応という視点で捕らえると,iPASが備える機能に目新しいものはない。ただし,同社が考えるAPサーバーという製品の位置付けは,他のベンダーのそれとは若干異なる。 同社にとっては,「ユーザーに対して総合的なポータル・サイトを提供することが最終目標であり,APサーバーはポータル構築機能の副産物に過ぎない」(斉藤氏)のである。同社は,エンタープライズ・ポータルを構築するための製品「iPortal Server」を2000年内に国内出荷する計画だ。iPortal Serverは,ビジネス・ロジックに対してXML(eXtensible Markup Language)を使った入出力を可能にした上で,JSPのタグを使って1枚のHTML上にアプリケーションをまとめて見せる機能を備える。

iPortal Serverのサービスにビジネス・ロジックを連携するためには,"既存"と"新規"という2つのパターンを想定している。CICSやIMSで稼働している既存のビジネス・ロジックは,「iPortal OS/390 Server」を利用し,Orbix 2000をインフラとした連携が可能だ。さらに,「iPortal Integration Server」では,メッセージングによる連携機能を提供する。一方,新規にアプリケーションを構築する際は,iPASを使ってJavaで開発するというシナリオを描いている。このように,iPAS単体の機能は標準的なJavaベースのAPサーバーの枠を超えないが,その背後にはエンタープライズ・ポータルの構築という大きな流れがある。

(森山 徹=日経オープンシステム)