携帯電話機型の端末を使い,IP電話の音声や呼制御データを無線LANでやりとりする「無線IP電話」。現在販売されている無線IP電話機のほとんどは,企業の内線電話で使うことを想定した製品である。しかし,中にはちょっと変わったタイプのものもある。単に内線電話機としてだけでなく会社の外でも使えたり,外出先から公衆無線LANサービス経由でIP電話をかけられるものだ。そこで今回は,そうした製品を4機種ほどピックアップして紹介しよう。

 まずは社内では無線IP電話機,社外では携帯電話機やPHS端末として通話などに使えるデュアルモード端末を紹介しよう。このタイプに分類されるのは,NTTドコモの「FOMA N900iL」と,ネットツーコムの「WiPCom」の2機種である。

 FOMA N900iLは,社内では無線IP電話機として,社外ではFOMA対応の携帯電話機として使える。

 一方のWiPComは,社内では無線IP電話機として,社外ではコンパクト・フラッシュ・スロットにPHSカードを挿すことで,PHS事業者が提供する音声通話やデータ通信サービスが使える。WiPComで面白いのは,富士通が開発したミドルウエアである「シームレスリンク」と組み合わせることで,IP電話を通話状態に保ったまま,無線LANとPHSを切り替えて使うといった芸当ができる点だ。

 050番号がもらえる家庭向けのIP電話サービス専用の無線IP電話機もある。アイピートークの「モバイルIPTalk レンタルパック」を契約すると,レンタルできる無線IP電話機「M107ip」がそれ。月額レンタル料金は3675円。家庭内の無線LANを介し,050番号を使ってIP電話の発着信が可能になる。もちろん,加入電話へもかけられる。ただし,月々のレンタル料のほかに,初期費用2万790円と指定プロバイダの利用料金がかかる。

 出先でも無線LANでIP電話を使えるタイプのものもある。代表例は,ライブドアが提供するIP電話サービス「livedoor SIP PHONEモバイル」の専用端末である「LDSP-0004」(2万8140円)だ。livedoor SIP PHONEモバイルを契約してLDSP-0004を購入すれば,公衆無線LANサービス(いわゆる「ホットスポット」)からIP電話サービスを利用できるようになる。ただし,このサービスで通話できるのはライブドアのIP電話サービスを契約しているユーザー間だけ。加入電話へ電話をかけることはできない。

斉藤 栄太郎