ちょっと思い立って屋外にWebカメラや無線LANアクセス・ポイントを設置しようとすると,LANケーブルの配線が悩みの種となる。そんな悩みを解消するLANケーブルが登場した。NTTアドバンステクノロジが2004年12月に発表した「LAN用すき間ケーブル」である。なんでも,「アルミサッシ越しに配線して,8年間毎日窓を開け閉めしても耐えられる」(開発担当者であるNTTアクセスサービスシステム研究所の杉本圭一郎主幹研究員)という。どんな構造になっているのだろうか。

 一般的なアルミサッシは,閉めても数mmのすき間がある。このため,薄型のLANケーブルならこのすき間を通して配線できる。ただし,一般的な薄型のLANケーブルは,窓を開閉しているうちに使えなくなってしまう。窓を強く閉めると窓枠がぶつかり,ケーブルが破損してしまうからだ。

 杉本主幹研究員らが行った実験では,普通に窓を閉めても,3kgのおもりを1mの高さから落としたのと同程度の衝撃がLANケーブルに加わることがあった。一般的なケーブルは被覆が柔らかいため,とがった窓枠が食い込む。繰り返すと被覆が破れて信号線が露出し,ショートしたり切れてしまう。

 そこで,LAN用すき間ケーブルでは窓枠と当たる表面を幅広にし,素材を堅いプラスチックに変更した。こうすれば衝撃が表面で分散する。この処理で,「中のケーブルに伝わる力は元の3割くらいに減る」(杉本主幹研究員)という。

 とはいえ,3割の衝撃は信号線に伝わる。何度も繰り返されるとやがて切れてしまうかもしれない。

 こうした事態を避けるために,LAN用すき間ケーブルは特殊な内部構造を採用した。LANケーブル内部の4対の信号線のうち1対だけをほかより太くて丈夫な導線にし,この2本をケーブルの両端に平行に配置する。2本の太い導線の間に残り3対のより対線を通す構造である。こうすれば,窓枠がぶつかったときに,両側の太い導線が緩衝材となり,中央の3対の信号線には衝撃がほとんど伝わらない。

 こうした構造にすることで,1万回窓を開閉する実験(1日4回で約8年分)を行ったも一切不具合は出なかったという。

 ただ,太くした導線はより対線ではなくなるのでLANの信号は通せない。10メガや100メガのイーサネットは4対のより対線のうち2対しか信号伝送に使わないから問題ないが,4対すべてを信号伝送に使うギガビット・イーサネットではこのケーブルは使えない。LANケーブルで機器の電源を供給するPoE(power over Ethernet)の場合は,両端の太い導線を使うのに問題はない。市販価格は5000円前後である。

山田 剛良