ネットワーク機器のマニュアルを読んでいたり,ソフトウエアを設定していると,「デフォルト」という用語をよく見かける。「デフォルト値は○○です」とか,「デフォルト設定ですぐにお使いいただけます」といった具合だ。パソコンのTCP/IP設定欄にも,「デフォルト・ゲートウエイ」という項目がある。これは本来どういった意味なのだろうか。

 ネットワーク関連のソフトウエアや機器には設定がつきもの。いろいろな設定項目に値を正しく入力しないと動作しない。機能が豊富なソフトウエアや機器ほど,設定項目は多くなりがちだ。

 そこで活躍するのが,このデフォルトになる。本来,ユーザーが何らかの値を指定すべきところに,特定の値をあらかじめ登録しておいて,ユーザーが何も設定しなければその値を採用するのである。このあらかじめ設定されている値を「デフォルト値」と呼ぶ。

 具体例を挙げてみよう。WebブラウザのInternet Explorer(IE)を起動すると,パソコン・メーカーなどのWebページが表示される。これは,IEを起動したときに表示するWebページのURL設定欄に,パソコン・メーカーのアドレスがデフォルト値として登録されているからだ。

 こうしてみると,「デフォルト」とはユーザーが便利に使えるようにするポジティブな意味合いがあるような気がするが,元来の意味合いはその逆。デフォルト(default)という単語を英和辞書で調べてみると,「怠ける」や「返済不能」といったネガティブな意味が記載されている。つまりデフォルト設定とは,「ユーザーが怠けてもいいようにする設定」なのである。

 ここまでわかると,冒頭で見た「デフォルト・ゲートウエイ」の意味も理解できる。

 デフォルト・ゲートウエイは,パケットの経路がわからなかったときに,そのパケットの転送を任せるルーターのことである。パソコンやルーターがパケットを送るときは,自分が持っている経路表から適切な経路を探し,その経路の中継先にパケットを転送する。ところが,経路表にすべての経路が登録されているとは限らない。そこで,「知らない経路あてのパケットはすべて特定のルーターに転送してしまおう」という処理をする。自分でできるところまでやって,あとはできる人に任せるわけだ。ここに「怠ける」や「返済不能」の意味合いが含まれている。

 また,「デフォルトのまま使い続けると危険」といった意見を聞いたことがある人もいるだろう。これは,デフォルト値が,わかりやすい(他人に推測されやすい)値に設定されていたり,同じ製品にはすべて同じ値が設定されているからである。いくらデフォルト設定で楽ができるからといっても,管理者用のIDやパスワードといったデフォルト値は変更して使うべきだ。

半沢 智