リピータ・ハブやLANスイッチのカタログを見ていると,「インテリジェント・ハブ」,「スマート・スイッチ」といった具合に,「インテリジェント」とか「スマート」という用語が登場する。いずれも高価で,高機能な製品を指す言葉として使われている。では,こうした「インテリジェント」や「スマート」にはどんな意味があるのだろうか。

 辞書を調べてみると,インテリジェント(intelligent)には「知的な,利口な,賢い」といった訳が載っている。もう一つのスマート(smart)にも「気の利いた,利口な」の意味がある。つまり,インテリジェントやスマートが名前に付くLANスイッチは「賢いスイッチ」という意味なのである。

 インテリジェント・スイッチとスマート・スイッチは翻訳するとほとんど同じ意味になるが,LANスイッチ製品を分類するときには明確な差がある。簡単に言うと,スマートの方がインテリジェントより格下だ。

 LANスイッチの仕事は,イーサネット・フレームを転送することである。具体的には,ポートからイーサネット・フレームを受け取り,あて先アドレスを読み取って,あて先のコンピュータが接続されているポートからフレームを送り出す。最近のLANスイッチは,こうした仕事を専用の集積回路(イーサネット・チップ)で処理している。

 スマート・スイッチは,この基本機能に加えてバーチャルLAN(VLAN)という機能を備えている。VLANは,ポートやアドレスごとにいくつかのグループを作って,同じグループ内でしかフレームをやりとりできないようにして,LANを分割する機能である。

 つまり「フレームを受け取って転送する」という本来の仕事に少しだけ別の機能が加わって,その分普通のスイッチよりも「少し賢い」わけである。

 さらに,インテリジェント・スイッチと呼ばれる製品は,スマート・スイッチの機能に加えて,ネットワークの管理機能にも対応している。管理機能とは,管理者がネットワーク越しにLANスイッチの稼働状態を監視したり,制御するための機能である。つまり,管理者の要求メッセージを解釈したり,それに応じて自分からメッセージを返信したりする「賢さ」が必要になるわけだ。

 こうした管理機能は,LANスイッチの本業である「フレームを受け取って転送する」仕事とは,まったく別の種類の仕事になる。そこで,インテリジェント・スイッチは管理機能に関する仕事をこなすために,専用のプロセッサを搭載している。

 同じ「賢い」でも,インテリジェントとスマートではこうした差がある。つまり,「インテリジェント=プロセッサが必要な処理」,「スマート=通常のものをちょっと改良」というわけである。実は,英語の「smart」には「ずる賢い」という意味があり,「intelligent」に比べるとやや含みがある。使い分けの背景には,こうした違いもあるようだ。

山田 剛良