日本の国別トップレベル・ドメイン名である「JPドメイン名」が世界で初めてIPv6に対応した。しかし,すでにIPv6を使うインターネット接続サービスやIPv6対応機器も多く登場している。ドメイン名がIPv6対応になることにどんな意味があるのだろうか,これでIPv6だけでインターネットが使えるようになるのか――。JPドメイン名を管理する日本レジストリサービス(JPRS)に聞いてみた。

 JPRSによると,そもそもJPドメイン名がIPv6に対応するには,4段階のステップがあるという。

 それは,(1)JPドメイン名を管理するDNSサーバーにIPv6アドレスを登録できるようにする,(2)DNSサーバーにIPv6アドレスを割り当てる,(3)JPドメイン名の上位であるルートDNSサーバーに,JPドメイン名を管理するDNSサーバーのIPv6アドレスを登録する,(4)ルートDNSサーバーにIPv6アドレスを割り当てる――である。

 これら4ステップを経てドメイン名に関するIPv6のインフラが整わないと,パソコンやプロバイダだけがIPv6対応になっても,インターネットが「IPv6レディ」になったとはいえない。IPv6ネットワーク上でDNSにwww.example.jpといったWebサーバーの名前解決を問い合わせても,そのWebサーバーに対応するIPv6アドレスを返してもらうことができないからだ。

 JPドメイン名ではすでに,(1)は2000年3月,(2)は2001年8月に対応済み。そして今回,(3)に対応した。JPRSはルートDNSサーバーを管理するIANA(Internet As-signed Numbers Authority)と技術検証を進め,JPドメイン名を管理するDNSサーバーのIPv6アドレス(4個)をルートDNSサーバーに登録してもらったのである。DNSに登録するIPv6アドレスのことを「AAAA(クァッドエー)レコード」と呼ぶ。

 これにより,JPドメイン名のDNSサーバーは,パソコンやほかのDNSサーバーからIPv6パケットで問い合わせを受け付け,ドメイン名に対応するIPv6アドレスを返信できるようになった。

 ルートDNSサーバーにAAAAレコードを登録したと聞くと,「何だ,それだけか」と思う人がいるかもしれない。しかし,DNSはインターネットのインフラを支えるサービスであり,おいそれと設定を変えられない。今回の登録は,IANAと協力しながら2年越しの作業でようやく実現したという。

 ただ,肝心の(4)のルート・ドメイン自体のIPv6対応がまだ残っている。ここがIPv6に対応しないと,ドメイン名に対応するIPv6アドレスを問い合わせるのに,ルートDNSサーバーへはIPv4でパケットを送らなければならない。

 JPRSによれば,「DNS関係者の間では,今後9~12カ月程度で対応できるという話が出ている」という。JPドメイン名で技術的な課題などが検証済みだからだ。

斉藤 栄太郎