4月27日と28日の2日間,国内で初となるネットワークの配線技術の競技大会がパシフィコ横浜で開かれた。大会名は「情報通信配線技術・技能競技大会」。NPO団体高度情報通信推進協議会が主催するイベント「情報通信配線技術フォーラム2004」の一環として実施された。

 参加者は,日ごろから配線工事に携わる技術者たち。一戸建て住宅やビル内を想定した競技スペースで,一定時間内に配線作業をこなし,光ファイバやメタル配線の技を競った。

 こうした競技会が開催された背景には,ブロードバンドの爆発的な普及がある。一般の家庭内まで光ファイバやメタル・ケーブルを引く工事が増え,配線を施工する需要は急増している。しかも,配線工事は,高速な通信になればなるほど正確さや確実さが必要となる。工事のちょっとした不備でも,高速な通信を実現するブロードバンドでは大きな影響が出る可能性があるため,従来の配線工事よりも高い技術が求められるのである。

 しかし,配線工事の方法や技術は業者によってばらばら。レベルにも差がある。配線技術に関する公的な資格もまだない。そこで高度情報通信推進協議会が,「技術者同士が切磋琢磨(せっさたくま)して配線の技術を向上させる」(西沢紘一・副理事長)場として,今回の競技会を開催したというわけだ。

 こうした機会があれば,配線業者がお互いの技術を学び,他社の技術が優れていれば,自らに取り入れて技術を向上させることも可能になる。「優勝しよう」という明確な目標ができることも,各技術者の施工技術の向上につながるだろう。「国内の配線の施工技術を底上げする」(西沢副理事長)のが目標である。

 もちろん,こうした競技大会が開かれることは,私たちユーザーにとってもメリットがある。

 今までは,ブロードバンド回線やLANの配線工事が必要になったとき,どんな業者に依頼すればいいのか見当がつかなかった。配線工事が重要でも,それをきちんと工事してくれる業者を見極める基準がなかったのである。

 そんな場合,競技会の結果は一つの判断基準になる。統一した基準で業者の技術を評価した結果なので,各業者の技術レベルを想像できる。例えば,競技会で入賞した業者なら安心して施工を頼めるだろう。今回の競技結果はこちらのWebサイトで確認できるようになっている。

 今回の大会の結果だけで配線業者を判断することは適切ではないかもしれない。ただ,今後このような大会が増えることで,より的確にきちんと配線工事をしてくれる業者を選べるようになっていくだろう。

 ブロードバンドという言葉は一般に定着したが,話題に上るのはFTTHやADSLのサービス内容ばかり。そうしたサービスを影で支える配線工事の技術に光が当たることは少ない。ただ,高い配線技術がないと,ブロードバンドの能力を生かしきれない。安心して配線工事を頼める業者が多くなることが,ブロードバンドのさらなる発展につながっていく。

安藤 正芳