急速に身近になりつつあるFTTH(fiber to the home)。アクセス回線に光ファイバを使うことで,100Mビット/秒という高速でインターネット・アクセスを実現するサービスだ。2004年2月には100万回線を突破,その後も順調にユーザー数を伸ばしている。

 そんなFTTHがさらに高速化し,手ごろな料金で利用できるようになりそうだ。2004年6月にIEEE802.3ahワーキング・グループが決めるFTTHの標準規格のなかに,PON(passive optical network)方式を採用した1Gビット/秒の規格「1000BASE-PX」が含まれているからである。

 PONとは,局からの光ファイバを電源不要のスプリッタという部品で分岐し,複数のユーザー宅まで引き込む方式。光ファイバを節約できるのでコストを抑えられるという特徴がある。

 1000BASE-PXの話をする前に,現状のPONについて解説しておこう。

 国内では,NTT東西地域会社などがすでにPON方式を使ったFTTHサービスを提供している。FTTHで現在使われているPONの技術は,通信方式の違いで二つに分類できる。一つはイーサネットのMACフレームをそのまま光ファイバに流すEPON(Ethernet PON),もう一つはATM(asynchronous transfer mode:非同期転送モード)という技術を使うBPON(Broadband PON)である。

 二つの技術のうち,これまで標準規格があったのはBPONのほう。ITU-T(国際電気通信連合電気通信標準化部門)が1998年にG.983として勧告化している。現状,FTTHサービスに採用されているBPON方式は,光ファイバ上の伝送速度が155Mビット/秒もしくは622Mビット/秒で,最大32ユーザーの回線を束ねる仕様になっている。

 一方のEPONのほうは,現状,各通信機器メーカーが独自技術で実現した機器を使ってFTTHサービスを提供している。一般的な仕様では,光ファイバ上の伝送速度が100Mビット/秒で,分岐数はBPONと同じ最大32である。

 それに対して,新しくIEEE802.3ahが標準化するEPON規格1000BASE-PX(GE-PONとも呼ばれる)の回線速度は,1Gビット/秒と高速化が図られている。さらに標準の分岐数は16で,最大32分岐の現状のFTTHサービスに比べて分岐数が減る。それだけ1ユーザー当たりが使える帯域は増える。

 1000BASE-PXが標準化されることで,今後国内のFTTHサービスでも1000BASE-PX方式を採用したサービスが増えてくるだろう。標準規格をベースとするので,メーカー独自規格の伝送装置よりも,価格が抑えられる可能性がある。現状と同じ程度の料金で,最高1Gビット/秒のFTTHサービスが提供される日も近いだろう。

阿蘇 和人