「1億台を普及させる」――。三大広域圏(関東・中京・近畿)の一部地域でディジタル地上波放送が始まった2003年12月1日に,日本民間放送連盟の日枝久会長は東京都内のホテルで開かれた式典であいさつし,現行のアナログ地上波放送が終了する2011年7月までに普及させるディジタル地上波放送用受信機の目標を宣言した。これは,放送業界や家電業界などが共同で設定した目標だ。放送業界にとっては,どれだけ魅力的な番組を提供できるかが,目標達成のカギになる。各社は2011年までディジタル放送のほとんどの番組で,自社のアナログ放送との同時放送(サイマル放送)を行う。そのためディジタル放送では,アナログ放送と同じ番組がピュアハイビジョンで見られたり,番組に関連する情報をデータ放送で確認できることなどを売り物にする。

 こうしたピュアハイビジョン放送や番組連動型データ放送の比率は,当初NHKが民放各社を大きく上回る。NHKがディジタル地上波放送の初期段階における普及をけん引することになりそうだ。民放事業者の場合,放送エリアが広がるなど効率的に受信機を普及させられる環境が整い,受信機がある程度普及するまでは,経営の面から番組制作費を抑制せざるを得ないのが実情である(詳細は日経ニューメディア2003年12月8日号に掲載)。