ディジタル地上波放送で提供される移動体放送の動画符号化方式として,「MPEG-4」に代わる方式を採用しようという動きが加速してきた。きっかけは,米国に本拠地を置く特許管理団体「MPEG LA」が,2003年2月10日に東京都内で開催したMPEG-4の特許に関する説明会である。その場でMPEG LAは,「特許料の支払い方法について従来の主張を繰り返すだけだった」(放送関係者)という。

 MPEG LAは放送事業者各社に対して,移動体放送の視聴者数に応じて最大で年間100万ドルの特許料を支払うよう主張している。だが放送業界は「不特定多数を相手にする放送サービスに,その支払い方法はなじまない」,「特許料が高すぎて,地方局に大きな負担になる」などと猛反発している。「このままでは移動体放送を開始するメドが付かない」として,放送関係者はMPEG-4の代わりに動画符号化方式「H.264」を採用する検討を本格的に開始した。ただし放送事業者は,H.264の採用を検討しながら,MPEG-4の使用も視野に入れている(詳細は日経ニューメディア2003年3月17日号に掲載)。