Webサイトの構築などを手がけるオン・ザ・エッヂ(東京都渋谷区)は、2002年10月から企業のネットビジネスの立ち上げや再生などを支援するコンサルティングサービスを開始した。堀江貴文社長に、同サービスの狙いや国内のネットビジネスの現状などを聞いた。

――新しく始めたコンサルティングサービスの強みは。

 従来のコンサルティング企業のサービスは、ビジネスの処方せんを書くレベルにとどまっている。当社の場合は、処方せんはもちろん、その後のシステム構築やどういった商材をそろえるかといったサイトのオペレーションなどの実装レベルまで提案していく。これが強みだ。
 これまでWebシステムの構築や自社でネット販売サイトの運営などを手がけてきた経験を生かすことで、こうしたトータルサービスを提供できる。コンサルティング料金については、顧客企業の状況に応じて、ネットビジネスでの売り上げが一定額を超えた分をシェアするといったやり方も提案していく。当社がコンサルティングして運営方法を見直せば、確実に売り上げが伸びるという自信があるからだ。

――国内のネットビジネスの現状をどのように分析しているか。

 消費者向けのブロードバンドサービスが急速に普及し始めた現在、企業にとってネットビジネスが成功する条件は整いつつある。しかし失敗の印象が強いためか、多くの企業は弱気になっている。ネットビジネスから撤退したくても、企業イメージに傷が付くのを恐れて、赤字を垂れ流したまま継続しているケースも多い。
 リアルビジネスを手がけてきた多くの企業が、ある時期に新規事業としてネットビジネスにこぞって参入したが、成功しているビジネスはそれほど多くない。とはいえ、売り方や運営の仕方などを見直すことで再生できるものは多いはずだと考えている。

――再生に成功したサイトはあるか。

 「アスキーストア」(http://www.ascii-store.com/)がある。書籍やソフトウエアなどを販売するアスキーストアは、以前はアスキーの子会社であるアスキーイーシー(東京都渋谷区)が運営していたが、2002年5月にオン・ザ・エッヂが営業権を譲り受けて、「アスキーストア」という名前のまま運営している。ここは、運用コストなどを徹底的に見直すことで、すぐに黒字転換した。2002年6月以降は、単月黒字を続けている。
 アスキー側にとっても、「アスキー」というブランド名を残すことで、アスキーがネットビジネスから撤退したというマイナスイメージを最小限に抑えられる。コンサルティングサービスでは、このように“振り上げた拳を降ろせずにいる”企業のネットビジネスを、当社の運営で再生するといった形態の需要も見込んでいる。

――今後、有望だと考えているネットビジネスは。

 ブロードバンド環境が浸透してきているので、ソフトウエアのダウンロード販売が伸びるだろう。当社が販売している電子メールソフトの「Eudora」も、販売サイトで月間で約3000本が売れている。
 ただ、ブロードバンドだからといってなんでもネット経由にすればいいというものではない。分野によっては、うまくリアルと結びつけるビジネス展開が必要だ。例えば当社は、2002年11月からDVDソフトのレンタルサービス「ぽすれん」をスタートする。レンタルの申し込みをWebサイトで受け付け、DVDの貸し出しと返却は郵送で行う。映像品質や著作権などの問題で、インターネットを介した映像のVOD(ビデオ・オン・デマンド)サービスは時期尚早だと考えている。このため、こうした形態のビジネスに参入した。専任担当者を2人にするなど、低コストでオペレーションする。
 ぽすれんの料金は、固定制で月額2980円から。1度にレンタルできるのは2作品までだが、返却すれば何作品でもレンタルできるという特徴がある。返却期限は設けない。レンタルビデオ店までの距離が遠く、足を運ぶのを面倒に感じている地方のユーザーなどに一定の需要があると見込んでいる。

(聞き手は太田 憲一郎=日経ネットビジネス)