トヨタ自動車とホンダが今秋、インターネットを使った自動車向けの情報サービスを開始する。トヨタは8月28日、KDDIの第3世代携帯電話(3G)の通信網を利用して、カーナビゲーション・システム向けに音楽コンテンツや電子商取引などを提供する情報サービス「G-BOOK」を発表。ホンダも8月29日、携帯電話やPHSをカーナビに接続して全国の渋滞情報やニュースなどを提供する情報サービス「インターナビ・プレミアムクラブ」を発表した。

 トヨタは、今秋に発売する新型車にG-BOOK対応のカーナビを搭載するほか、2003年中にもメーカー装着のカーナビを標準でG-BOOK対応にする予定だ。ホンダも、今秋の新車発売に合わせて、新サービスに対応したカーナビの販売を開始する。既に「カーウイングス」を提供している日産自動車を含めて、三つどもえの自動車IT化競争が始まる。

 トヨタのG-BOOKの目玉は、最大144kビット/秒という3Gの高速データ通信機能を生かしたカラオケやゲームなどのコンテンツサービスや、電子メールや掲示板などのコミュニケーションサービス。有料コンテンツやサービスの提供では外部の企業と提携する。現時点では、角川書店やセガ、タイトーなど47社と提携済み。コンテンツやサービスの料金は、トヨタが徴収を代行する。

 具体的な金額は明らかにしていないが、「料金を気にしないで様々なサービスを利用してもらえるよう、G-BOOKの通信料には定額制を導入する」(トヨタ自動車の豊田章男常務)。このほか、PDAやインターネット接続機能を持った携帯電話と連携したサービスも提供する。G-BOOKセンターのWebサイト上にユーザーの個人ページを用意し、このサイトに接続してパソコンやPDA、携帯電話から直接G-BOOKのサービスを利用できるようにする。

 一方、ホンダは「あくまでもドライバーに役立つサービスにこだわる。カラオケやショッピング機能などは提供しない」(インターナビ推進室の山田清実室長)と、G-BOOKに対するライバル意識をあらわにする。接続できる携帯電話やPHSも、NTTドコモの3Gサービス「FOMA」を除く全サービスと、幅広く対応する。

 ホンダのインターナビ・プレミアムクラブの最大の特徴は、カーナビで経路を設定する際に、ホンダが独自に収集、加工した全国の渋滞情報をダウンロードできること。ホンダが道路交通情報通信システム(VICS)センターと日本道路交通情報センターから渋滞情報を集め、区間移動時間を独自に計算して配信する。現在、道路に設置してあるアンテナやFM多重放送から受信するVICS情報は、自動車が通過している都道府県の渋滞情報に限られる。ホンダは、全国の渋滞情報を自前で集約してネット配信することで、都道府県を横断する場合でも最適な経路を設定できるようにする。

 インターナビ・プレミアムクラブの利用料は、新車登録以降3年間は無料で、4年目以降は月額数百円。地図情報を収録したDVDも、3年間は毎年無料で交換し、その際にカーナビに搭載するアプリケーション・ソフトも更新する。

(太田 憲一郎、大竹 剛=日経ネットビジネス)