NTT-MEは8月1日、無線LANアクセスサービスの「ネオモバイル」のトライアルを開始した。ネオモバイル上でのVoIP(voice over IP)携帯電話サービスを計画するなど、IP電話サービスも積極的に展開中だ。ブロードバンド分野でのNTT-MEの取り組みについて、2002年6月に就任した石川宏社長に話を聞いた。

――NTTの社長に和田紀夫氏が就任するなど、NTTグループ各社も新体制になった。NTT-MEのグループでの位置付けはどうなるのか。

 NTTグループの競争相手として、電力系通信事業者やヤフーが台頭してきた。このため、NTTグループとして結束を強めようという方向に変わってきている。性根を入れてブロードバンドビジネスに取り組まなければならない。NTT-MEに求められる役割は2つある。ひとつはIP電話サービスなどをいち早く商用化する、グループの“先兵”としての役割。そしてもう1つが、グループ各社が提供するIP電話や無線LANアクセスサービスなどを相互接続していく“パテ”としての役割だ。

――NTT-MEはグループの中でもIP電話サービスを積極的に進めてきた。

 NTT-MEは昨年から、グループに先駆けてIP電話サービスを商用化した。IP網を使った通話サービス「WAKWAKコール」とフレッツADSLを使って加入者間で無料で通話できる「WAKWAKコール・ゴーゴー」だ。2002年6月末の時点で、WAKWAKコールは約5万7000ユーザー、13万3500回線のユーザーがいる。WAKWAKコール・ゴーゴーは380ユーザー、1500拠点で使われている。ヤフーなど競合他社がIP電話サービスに力を入れている以上、NTTグループとしてサービス拡充に力を入れていく必要がある。

――しかしNTTグループとしてはIP電話に慎重だ。グループ戦略に合致しないのではないか。

 そんなことはない。我々がIP電話サービスに力を入れているのは、将来、NTT東西地域会社が本格的にIP電話サービスに乗り出すことを視野に入れ、我々が技術やインフラ面で支援できる環境を先に作っておきたいからだ。例えばNTT-MEがWAKWAKコールで使っているIPバックボーンネットワークの「Xephion」は、地域会社がIP電話に乗り出す上でも役に立つインフラになるだろう。一方、サービスの相互接続にも着手している。NTT東日本が8月1日に商用サービスを始めた、インターネットを使ったパソコン同士のテレビ電話サービス「フレッツ・コネクト」と、WAKWAKコール・ゴーゴーを相互接続できないかといった話し合いを始めている。

――NTT-MEが“パテ”になるということだが、具体的な成果は出ているのか。

 例えば無線LANアクセスサービスの「ネオモバイル」では、複数の事業者の無線LANアクセスサービスを相互乗り入れする「ローミング」に力を入れている。既にネオモバイルのトライアルで、NTT-BP(NTTブロードバンドプラットフォーム)とローミングの実験をしているところだ。電力系事業者のサービスとローミングするのは最後になるだろうが、少なくともNTTグループについては相互乗り入れを働きかけていく。

(聞き手は永井 学=日経ネットビジネス)