ソニーが非接触ICカード「FeliCa」の普及に向けた動きを加速し始めた。JR東日本のIC乗車券/定期券「Suica」に続いて狙うのは、電子マネー「Edy」による決済機能を備えた個人認証カード。ソニー、ソニーマーケティング(東京都港区)、伊藤忠テクノサイエンス、シーティーシー・テクノロジー(東京都江東区)が共同出資するソニーブロードバンドソリューション(東京都港区)が中心となって、社員証、学生証などへの導入を進めている。

 FeliCaは、既にソニーや東京三菱銀行、サンデンなどが社員証に採用済み。現在は社内での入退室管理が主な用途だが、今後は自動販売機や食堂での支払いにも拡大する予定だ。また、一部の大学では学生証として採用する動きがある。来年度の本格導入に向け、9月にも実証実験を始める大学もあるという。これらの大学では、学内のパソコンへのログインや図書の貸し出し手続きの際の個人認証、コピー機や各種証明書発行機の代金決済などの機能を学生証に付加する予定だ。

 このほか、住人の個人認証にFeliCaを使うマンションも登場する。ダイア建設(東京都新宿区)は、来年10月に完成予定の分譲マンション「ダイアパレス つくば学園都市 WIVE」にFeliCaを導入する計画である。住人に個人認証カードを配布し、マンション入口のオートロック解除や、ゲストルーム、フィットネスジムなどの共有施設の入退室に利用してもらう。今年10月中旬にオープンするモデルルームで、実際に体験できるようにする。

 JR東日本のIC乗車券/定期券「Suica」への採用で一気に広まったFeliCa。しかし、ソニーは当初から多機能カードとしての拡大を視野に入れていた。他の非接触ICカードの規格に比べて処理速度が速いFeliCaは、多機能化して処理が複雑になった方が強みを生かせると考えているからだ。複数の機能を搭載した個人認証カードをその足掛かりとする戦略である。

(平野 亜矢=日経ネットビジネス)