東京都杉並区の山田宏区長は8月1日、住民基本台帳ネットワークシステム(住基ネット)に同区が接続しないことを表明した。約51万人の住民がいる杉並区の決断は、8月5日に予定されている住基ネットの稼働だけでなく、全国の自治体の動向にも大きな影響を与えそうだ。

 不参加に伴い杉並区は、8月5日に住基ネットが稼働してもデータを送信しない。仮運用のために地方自治情報センターに送信した区民のデータは、東京都に対して消去を求める。参加自治体の住民に付与される11ケタの住民票コードは、区民には通知しない。

 総務省は、住基ネットへの不参加が改正住民基本台帳法に違反するとの見解を示している。これに対して山田区長は、「確固とした個人情報保護の法制度が未整備のまま改正住基法を施行し、住基ネットを稼働することこそ違法。個人情報保護に万全を尽くすのは市区町村長の最も重要な責務で、法制度が整備されるまで参加しないのは適法だ」と主張している。

 住基ネットの稼働には、個人情報保護法案の成立が必要不可欠と判断している自治体は多い。杉並区も基本的に、同法案の成立を待って住基ネットに参加する意向だが、「看板が個人情報保護でも、中身がないようなら改めて検討する」(山田区長)考えだ。

(瀧本 大輔=日経ネットビジネス)