総務省が主宰する「電力線搬送通信設備に関する研究会」(座長:杉浦行東北大学電気通信研究所教授)は、2002年7月31日に開催された第5回研究会で、電力線を「高速通信に利用することは、時期尚早」という検討結果を発表した。

 現在の電波法では、電力線を使った通信の周波数帯として、10k~450kHzの利用が認められているが、通信速度は9600ビット/秒程度と低速。同研究会では、数十Mビット/秒の高速通信が可能な2M~30MHzの周波数帯を電力線通信用に開放することを視野に入れて、放送や他の通信に与える影響を調査してきた。その結果、電力線通信用モデムから漏えいする電界によって、短波放送が受信できなくなるなどの干渉が見られた。そのため、2M~30MHz帯の開放は時期尚早という結論に達した。

 2M~30MHzの周波数帯が利用できれば、電力線が家庭のブロードバンドインフラになるとして注目されていた。欧州では、既に電力会社が電力線を使った高速ネット接続サービスを提供している。今回の研究会の結論によって、日本の電力線によるブロードバンドの実現は、先延ばしになった格好だ。

(太田 憲一郎=日経ネットビジネス)