鳥取県議会は7月3日、住民基本台帳ネットワークシステム(住基ネット)の延期を求める意見書を提出することを可決した。三重県議会も6月28日に同様の意見書の提出を決議した。これまで、東京都国分寺市や大阪府高槻市など、市町村が住基ネットに対して質問書や意見書を提出しているが、県レベルでの“反発”が起き始めた。

 8月5日に稼働を始める住基ネットは、住民基本台帳にある氏名や生年月日、住所、性別などの個人情報をオンライン化する仕組みである。国民に11ケタの番号を付け、住民基本台帳にある氏名や住所、性別、住民票コードなど、本人確認のための個人情報をネットワーク上で管理する。これにより、例えば住民票の取得などの行政手続きが、どの市町村からでも申請できるようになる。

 今回の自治体の動きは、この住基ネットの稼働が「個人情報の保護措置」を前提にしていたことに端を発する。個人情報保護法の成立のメドが立たなくなったことと、防衛庁のリスト作成問題を受けて、地方自治体の疑念が一気に噴出したというわけだ。鳥取県議会の意見書では「個人情報保護のための法制度が整備されないまま、住民基本台帳ネットワークシステムをスタートさせたのでは、住民のプライバシーが侵害される危険が非常に高い」と主張している。

 一方、総務省は「個人情報の保護措置としては、住民基本台帳法の枠内で十分だと考えている。住民基本台帳法には個人情報の用途を明記しており、情報が万が一漏えいした場合の、職員の罰則規定なども設けている」としている。8月の施行までに国全体、都道府県、市町村レベルで緊急時の対応計画(コンテンジェンシープラン)をまとめるが、住基ネットのスケジュールを延期する予定はないという。

 住基ネットの稼働に加わらない自治体は、住民基本台帳法違反に問われる。そのため鳥取県の場合も「住基ネットは稼働させざるをえない」(鳥取県市町村振興課)。住基ネットは、国と地方自治体との間に、意識面の“しこり”を残したままの船出となりそうだ。

(永井 学=日経ネットビジネス)