政府が推進している電子政府・電子自治体の計画実現が、当初の予定よりも遅れる可能性が高まった。個人情報保護法案の審議が難航しているあおりを受けたもので、政府が提出した行政手続オンライン化関連3法案の審議は、次期国会に先送りされる見通しだ。政府のe-Japan戦略のスケジュールにも、大きな影響を及ぼす可能性が高い。

 国会に提出された3法案は、「行政手続等における情報通信の技術の利用に関する法律案(行政手続オンライン化法案)」、同整備法案、「電子署名に係る地方公共団体の認証業務に関する法律案(公的個人認証サービス法案)」。
 
 3法案は、いずれも電子政府や電子自治体の根幹をなすものだ。行政手続オンライン化法案は、書面に限定されていた行政手続きをオンラインでも可能にする。整備法案は、オンラインで可能な行政手続きの種類を増やすため、住民基本台帳ネットワーク(住基ネット)の利用範囲を拡大する。公的個人認証サービス法案は、ネットでの本人確認に必要な電子証明書を地方自治体が発行し、住基ネット用の個人ICカードに記録して配布できるようにする。
 
 この結果、旅券申請など様々な住民手続きのオンライン化が実現する。それには住民の個人情報が登録される住基ネットが本格稼働している必要があるが、住基ネット上の個人情報の安全性を担保するため、個人情報保護法の成立が前提条件とされている。しかし同法の今国会での成立は難しい情勢で、さらに防衛庁の個人情報リスト問題が表面化したことが、追い打ちをかけた。
 
 こうした民間の利便性を向上させる行政サービスの実現は、政府が発表した「e-Japan重点計画-2002(案)」で2003年度が目標と定められている。しかし3法案の成立が遅れると、これらのサービスの実現に遅れが生じる可能性が高い。片山虎之助総務大臣は、3法について「電子政府・電子自治体の、いわば根拠法。(成立遅れが電子政府に及ぼす)影響はあるだろう」との認識を示している。

(瀧本 大輔=日経ネットビジネス)