タイトーは今年の夏に、ブロードバンド対応の業務用通信カラオケ機器を発売する。演奏音に近い高品質な楽器音データと楽譜データを、ADSL(非対称デジタル加入者線)などブロードバンドの通信回線でカラオケボックスなどに送れるようにする。1曲当たりのデータのサイズは3Mバイト前後と大きいが、音質はCD並みになるという。

 「これまでの通信カラオケでは、楽器音のデータをあらかじめハードに搭載しなければならず、その数も約2000種類と少ないため音質に限界があった。今回は完全にブロードバンドのネットワークを前提に開発した。楽器音のデータは、必要なだけすべてネットワーク経由でハードに送るので、生演奏に近い高品質の再生が可能だ。さらに採点機能など、追加のソフトもネット経由で送ることができる」とタイトーAV事業本部CSP営業部の北村秀仁副部長は語る。

 今回の製品化に当たり、タイトーは米マサチューセッツ工科大学(MIT)のバリー・バーコー教授が開発した、電子音源を開発できるプログラミング言語「Csound」をベースにした。Csoundは音そのものや楽曲を、周波数の数値を記述していくことで作成できる言語。生演奏に近い楽器の音を作れるほか、音の合成やエフェクトの追加など、様々な処理ができる。

 例えば、タイトーが製品化するカラオケでは、歌い手のリズムに合わせて、歌い手が早く歌えば伴奏が早く、遅く歌えば伴奏も遅く追従する、といった機能を提供する。これはCsoundの技術を使って、歌い手の音をリアルタイムで周波数に変換し、時系列に並べて伴奏と比較してスピードを調整している。

 Csoundは80年代後半に発表されたが、高品質の音源作成や各種の加工処理が可能といったメリットの一方、処理速度が遅いという問題があった。そこでタイトーでは半導体メーカーの米アナログ・デバイセズ社が開発したデジタル信号処理専用のDSP(Digital Signal Processor)を3個搭載することで、リアルタイム処理を実現した。今後タイトーは、このDSP搭載のパソコン用ボードの一般販売や、他社へのライセンス供与などを検討する。

(永井 学=日経ネットビジネス)