経済産業省は3月29日にも「電子商取引等に関する準則」を公開する。この準則は、同省が法務省、公正取引委員会などと協力してまとめたもので、EC(電子商取引)に関連する様々な法律の解釈を示している。

 準則とは法律に準じて導いた解釈で、それ自体は法的拘束力はない。それでも経済産業省が準則を取りまとめた背景には、商取引を規定する民法などがインターネットの利用を想定していなかったたため、ECのトラブルに関する法律の解釈が不明確だったことがある。本来こうしたトラブルは裁判によって司法判断が示され、以降それが判例として同様のケースの判断基準になる。しかし、日本では裁判で判決が出るまでに2年近くかかるため、経済産業省は準則の形で法解釈を明確にしたもの。また2001年以降、電子署名法などのEC関連の法律が次々と施行されていることも、法解釈を明確にした理由として挙げる。

 事業者にとっては、ECに関連する法律への解釈が明確になり、現場の対応に応用することで、法的なリスクを軽減することができるというメリットがある。同省はこうした取り組みで、ECの環境整備を進めて市場を活性化する考えだ。

 準則では、「契約の成立時期」「ウェブ上の広告表示の適正化」「ドメイン名の不正取得等」など、テーマごとにまとめている。ほかにも電子モールの出店者と消費者の間でトラブルがあったときに、電子モールが責任を負う場合や「なりすまし」による不正な注文があった場合に、被害者や認証機関の責任を負う場合なども明確にしている。

 経済産業省は3月5日から19日までの間、準則(案)に対する、パブリックコメントを募集していた。今後も業界からの意見やビジネス環境の変化を反映して、毎年内容を見直していく方針だ。

(太田憲一郎、水野孝彦=日経ネットビジネス)