ソニーが電子マネーサービス「Edy」の普及に向け動き出した。Edy用の非接触型ICカードとリーダー/ライターを初めて標準添付した「バイオW」が、発売2週間でデスクトップ販売台数のシェア16%を占めるヒット商品なり、今後Edyのインストールベースが一気に広がる可能性が出てきたのだ。

 Edyはソニーが開発した非接触型ICカード技術を用いた決済サービス。専用端末にICカードをかざすだけで決済手続きができる。2001年には、ソニー、NTTドコモ、さくら銀行(現・三井住友銀行)などが共同でビットワレット(東京都品川区)を設立し、Edyの普及を目指している。しかし、Edyで利用できる魅力的なサービスがそろっていないこともあり、経過は順調とはいえない。JR東日本の定期券/プリペイドカード「Suica」がEdyの技術を採用したことで話題になったものの、Edy自体の普及には結びつかなかった。

 現在、Edyが利用できるWebサイトは10サイト。ソニーマーケティング(東京都港区)の直販サイト「SonyStyle」やAII(東京都品川区)の動画配信サービスなど、ソニー系企業が中心なのが実情だ。リアル店舗としては、コンビニエンスストア「am/pm」が今年夏をめどに全店舗に導入する予定だが、現在は5店舗にとどまっている。

 そこでソニーが出した奥の手が、バイオWに“密かに”添付すること。「Edyのインストールベースを拡大して、協力企業を集める糸口にしたい」という思惑からだが、他社との協業でEdy普及を推進する以上、ソニー主導の印象を与えるわけにはいかない。バイオW にEdyを標準添付していることを、今までほとんど宣伝してこなかった。

 バイオWの大ヒットで、Edy普及に向けたソニーの戦略はひとまず成功したといえる。だが、端末の数が増えるのと、ユーザーの数が増えるのは別問題。Edyがソニーの枠を超えて業界のデファクト・スタンダードになれるかどうか、取り組みはまだ始まったばかりだ。

(平野 亜矢=日経ネットビジネス)