EC(電子商取引)の大手企業同士がネット上の電子カタログ流用を巡り争っていた裁判は、和解という形で決着した。この裁判は、映画や音楽のDVDソフトをネット販売しているディスクステーション(名古屋市千種区)が、同業のヤマギワ(東京都千代田区)を2001年2月に、ジェイブック(川崎市高津区)を同7月に訴えたもの。両社がディスクステーションのECサイト内にある商品カタログの一部を無断で使用したとして、合わせて9600万円の損害賠償を求めた。

 ディスクステーションが2社に流用されたのは、監督や出演者、上映時間、ストーリーの概要などの商品情報や商品パッケージの写真。裁判でディスクステーションは、流用が著作権法に違反していると主張した。ただし、現行の著作権法では、対象物に創作性がなければ保護の対象とはならない。

 この点について同社の宮地章社長は、「電子カタログに掲載している情報は、映画会社やDVDメーカーが作成したものをそのまま使用しているわけではない。例えば出演者の情報であれば、誰をどのような順番で掲載するかを独自に判断している。当社が情報に相当程度手を加えていることから、十分な創作性を持っているはずだ」と反論。対する被告側は、「商品カタログは一般に公表されている情報を寄せ集めただけで、創作性は認められない」と主張した。

 関係者の話を総合すると、裁判所は今回の事例では著作権法を適用できないと判断したようだ。和解内容は「被告側は流用の事実を認めて遺憾の意を表し、今後同様の行為を一切行わない。また、原告に対して和解金を支払う」というものとなった。

 ヤマギワは本誌の取材に対し弁護士名で「裁判所は当社の主張に理解を示していたが、裁判費用等の事情を考慮して和解に応じ、若干の和解金を支払うことにした」と回答。流用が不法行為と認識しているかどうかについては、コメントしなかった。

 また、ジェイブックは「調査の結果、Webサイトの制作を任せていたアルバイト社員がデータを流用してしまったことが判明した。あってはならないことで、同じ間違いを繰り返さないように管理体制を強化した」(統括管理部)と非を認めた。

 和解内容についてディスクステーションの宮地社長は「和解金は請求額の数十分の1に過ぎず、裁判費用もまかなえない。コストをかけて電子カタログを作りECを展開している企業にとっては、厳しい結果だ」としている。

(河野 修己=日経ネットビジネス)