マイクロソフトは2001年12月17日、同社が2002年半ばから試験運用を開始するWebサービス「.NET My Services」の概要を明らかにした。Webサービスとは、小さなソフトウエア部品を「サービス」として複数のWebサイト間で互いに連携させ、統合的なサービスを提供しようというコンセプト。マイクロソフトは試験運用後、2002年末から2003年ごろに本サービスを始める予定だ。
既にマイクロソフトはユーザーログインなどの認証機能を「.NET Passport」として無償で提供している。今回の.NET My Servicesでは.NET Passport以外に、ユーザーの氏名や住所、誕生日などを参照できる「.NET Profile」や、ユーザーのカレンダー情報を利用できる「.NET Calendar」、ユーザーにリアルタイムでメッセージを送る「.NET Alerts」など、現在15のサービスを予定している。これらのサービスが整えば、ユーザーは住所やクレジットカード番号などの情報を再入力する必要がなくなり、開発者は一からアプリケーションを開発する手間を省けるようになる。
Webサービスでは、複数のWebサイト間を個人情報が行き来するためプライバシー保護が重要になる。.NET My Servicesの場合、「.NET Profile」などで扱う個人情報をマイクロソフトが一元管理する。この点について米マイクロソフト社のエリック・ラダー上級副社長は、「マイクロソフトは機能を提供するだけで、データマイニングやスパムメールの配信といったデータの2次利用はしない」と強調する。
米国では、「TRUSTe」や「BBBOnline」などのプライバシー保護団体の承認を受けてサービスを実施する。ユーザーにはW3C(World Wide Web Consortium)が定めたプライバシー保護のための規格であるP3P(Platform for Privacy Preferences)に基づき、情報開示の許諾を得るようにする。
一方、日本でサービスを実施するには、2002年の通常国会で審議される「個人情報保護法」への対応が必要になる。同法案は個人情報の収集や利用に法的な枠組みを与え、情報の流出や悪用を防ぐのが目的。マイクロソフトの阿多親市社長は、「個人情報保護法が成立すれば、当然それに準拠する体制を作る。既に政府には我々から見解書を提出している。Webサービスを利用する事業者にも、マイクロソフトと同じセキュリティーレベルを保つことを呼びかける」と話す。
今回の発表に先立ち、日本ではジェイアール東日本情報システムやJTB、ニッセン、NTT東日本が.NET My Servicesのテストに参加し、個人向けの旅行予約サイトや通販サイトなどで実際のアプリケーションの開発・検証を行った。「.NET Alertを使って、航空券などのキャンセル待ちの連絡をリアルタイムに行うなど、EC(電子商取引)の販促ツールとして幅広く活用できる」とJTBの志賀典人取締役市場開発部長は期待する。