デジタルからアナログへ――。携帯電話や情報家電向けのソフト開発を手がけるACCESSが,雑誌の出版に乗り出した。ぴあの元幹部社員5人を引き抜いた上で,7月10日に出版社「アクセス・パブリッシング」を設立。10月には情報誌「東京カレンダー」を創刊する。異業種に進出する荒川亨社長に,その狙いを聞いた。

――雑誌出版は,本業からかけ離れているように見えるが?

 携帯やカーナビなどの情報家電に向けたコンテンツの供給が目的だ。まず雑誌事業だけでも収益を上げる体制を作った上で,順次,情報家電にコンテンツを供給していく。映画,音楽,ニュースといった既存のコンテンツホルダーを納得させるためには,目に見える形で受け皿を用意する必要がある。

 決意したのは1年前。今はタマゴが先かニワトリが先かを考えるよりも,自ら市場に火をつけるべき時だと考えた。電機メーカーが単独で動いてもコンテンツ確保には限界がある。一方,既存の出版社などは旧来の媒体で成功してきただけに,情報家電へのコンテンツ供給に腰を据えて取り組みにくい。

 我々のやり方がベストとは思わないが,挑戦する価値はある。iモードは希有な成功例だが,カーナビやテレビなどの機器でも同様のブームを起こせるはずだ。

――他社のコンテンツに埋もれてしまうのでは。勝算はあるのか?

 我々のWebブラウザーを搭載した機器は,携帯電話を中心に2001年度で2400万台に達する見込みだ。2002年度には3000万台を超えるだろう。こうした機器を製造するメーカーに,コンテンツもセットで提供する。創刊後1年で総台数の5%,3年目には30%くらいの機器にバンドルしたい。既に多くのメーカーから引き合いがある。

 携帯の“ポータル開放”がチャンスになる。総務省が携帯電話会社に開放の方針を示していることから,2002年末か2003年にはコンテンツをボタン1つで直接呼びだせる携帯電話が登場するのではないか。ACCESSはメーカーに一番近く,コンテンツ流通の上でベストのポジションにある。
(聞き手は本間純=日経ネットビジネス)