BS/CS共用の次世代端末に,Webブラウザーが搭載されないことがほぼ確実な情勢になった。端末やサービスの規格を策定する企画会社イー・ピー・エフ・ネット(東京都中央区)によると「仕様書のひな形の段階で,Webブラウザーの搭載は見送った」(イー・ピー・エフ・ネット広報担当リーダーの岩井利仁氏)。12月末に技術標準化団体の電波産業会(ARIB)に仕様案が提出され,正式な仕様は2001年6月ころに決まる予定だが,表示可能なコンテンツはBS/CSデータ放送専用のBML(Broadcast Markup Language)形式に限定され,Webブラウザーは搭載されない可能性がきわめて高い。Webブラウザーなしでは既存のWebサイトが見られないわけで,国内での“テレビとインターネットの融合”の可能性はほぼ断たれたと見てよい。

 この次世代端末はセットトップボックス型で“蓄積型”と呼ばれ,大容量のハードディスクや高速モデムを搭載する。早ければ2001年末にも始まる,東経110度CS放送の開始に合わせて発売される。2000年7月,松下電器産業,東芝,ソニー,日立製作所の“4社連合”が「eプラットフォーム準備委員会」を結成し「放送と通信(インターネット)の融合による連動サービスを実現する」と表明した時点では,“Tコマース”普及の切り札として期待されていた。11月13日には,4社に民放TV局や広告代理店10社が加わり,共同で企画会社のイー・ピー・エフ・ネットを設立し,具体的な仕様策定作業に入っていた。

 背景には,放送局とメーカーが視聴者を囲い込む閉鎖的なビジネスモデルで,利益を確保しようとする思惑が見え隠れする。端末へWebブラウザーを搭載すれば,企業がユーザーに放送局を“バイパス”させて自社サイトに誘導できるようになる。これは放送局自身が企業とユーザーを結ぶ“ゲートウエイ”となって手数料などの収入を得る,現在想定しているビジネスモデルを根本から揺るがす。結局,Tコマース参入を狙う企業は,放送局と契約した上で,BMLコンテンツを用意する必要が出てくる。Tコマースへの参入を希望する企業にとって,そのハードルは非常に高いものになりそうだ。

(本間 純=日経ネットビジネス編集)