講談社(東京都文京区)と富士ゼロックス(東京都港区)はコンテンツ販売サイト「源氏大学ドット・コム」( http://genji-daigaku.com/ )を共同で開設し,10月11日からサービス開始した。いわゆるオンデマンド出版のサービスを提供するもので ,利用者は源氏物語に関する複数のコンテンツを自由に組み合わせ,購入するできる。購入したコンテンツは後日,製本された形で配送される。支払いはクレジットカードと銀行振り込みに対応している。

 現在,オンデマンド出版可能なコンテンツは瀬戸内寂聴氏による「源氏物語」現代語訳と「源氏大学」の講義録で,11月にはコミック「あさきゆめみし」(大和和紀著)もこれに加わる。源氏大学は講談社が1999年から各地で開催している講座で,瀬戸内寂聴氏を学長に迎え,源氏物語に関わりのある著名人,専門家などが講義を担当している。来年1月には,この講義を録画したものを動画データとして,会員向けに有料で提供していくことを検討している。

 源氏大学ドット・コムで購入する場合,物語の区切りとなる1帖当たりの値段は850円~1500円前後。一方,書籍で発売されている「源氏物語」現代語訳(全10巻)の場合,例えば「源氏物語 巻1」は5帖収録で2524円で販売されおり,オンデマンドの方が割高だ。しかし,帳単位で購入できる手軽さや,瀬戸内寂聴氏のサインや書店の書籍とは異なる装丁といった付加価値を付けることで新規需要を見込む。

 富士ゼロックスは源氏大学ドット・コムに対し,自社のブック・オンデマンド・サービス「BookPark」を通して,サーバー類の構築運営,書籍の制作,配送などを提供する。これにより,富士ゼロックスは販売収入のうち70%を,講談社は30%を受け取る。

 講談社は村上龍の長編小説「共生虫」をオンデマンド出版により,1000部販売した実績があるが,「長編小説はオンデマンド出版には不向き」(文芸局長 宮田昭宏氏)と判断。小さな単位に分割,組合せ可能なオンデマンド出版向きコンテンツとして源氏物語や源氏大学の講義録を提供する源氏大学ドット・コムのサービスを提供することにした。(太田 憲一郎=日経ネットビジネス編集)