2000年3月10日,NTT三菱電機は,カギ長が128ビット以上の共通カギ暗号「Camellia」を共同開発したことを発表した。ソフトウエアとハードウエアのどちらに実装しても,小型化および高速化を実現できることが特徴であるという。アルゴリズムの詳細は今後学会などで発表する。また,2000年3月10日,両社はCamelliaをISO(国際標準化機構)標準暗号にするために,ISOの国内委員会に提出した。標準暗号は2001年あるいは2002年に決まる予定である。

現在利用されている共通カギ暗号の「DES」,「RC4」などはカギの長さが56あるいは64ビットである。暗号解読に利用するコンピュータの性能が向上しているため,今後もこれらの暗号を使い続けるのは危険とされている。そのため128ビット以上のカギを使う“次世代共通カギ暗号”の開発が世界中で進められている。たとえば米国ではDESに代わる連邦政府暗号標準暗号としてAESの選定作業が進められており,2000年の夏に決まる予定である。欧州でも標準暗号開発の動きが始まっている。「Camellia」はこれらの動きを受けて開発された。

両社の得意な技術を結集

単にカギ長が長い暗号ではなく,「ソフトウエアとハードウエアのどちらにも適した実装が可能な,いわゆるマルチプラットフォームの暗号アルゴリズムを開発することが目的だった」(三菱電機 情報技術総合研究所 情報セキュリティ技術部 チームリーダー 主席研究員 松井 充氏)。NTTはソフトウエア実装に適した暗号設計技術を持ち,三菱電機は小型で高速なハードウエア実装に適した暗号設計技術を持っているとされている。この両社の技術を組み合わせて開発されたのがCamelliaである。

2000年3月10日,両社はCamelliaをISOの国内委員会に提案した。選定の詳しいスケジュールは未定だが,ISO標準暗号は2001年あるいは2002年に決まる予定である。ただしISO標準暗号に選定されても,普及するとは限らない。(Y.K.)