Web基礎技術の標準化団体であるW3C(World Wide Webコンソーシアム)は米国時間で4月1日,Webコンテンツに意味情報を与える技術「OWL(Webオントロジ言語)」の最終ドラフト仕様を公開した。Webコンテンツに意味情報を付加し,きめ細かな処理を機械(コンピュータ)で実現しようとする次世代Web構想「セマンティックWeb」を支える技術の1つである。

 OWLは,セマンティックWebにおける意味情報を記述するときに使う語句の集まり(語い)を定義するための仕様だ。セマンティックWebでデータの意味を正しく解釈するには,利用する語句の意味定義を,あらかじめ機械が把握しておく必要がある。これは,人間が対話するときに,同じ語いを同じ意味で使わなければ話が通じないのと同じだ。そこでOWLでは,利用可能な語いと,語いに含む語句の関係を定義できるようにしている。

 語いの定義自体は,すでに標準化を終えた「RDF(資源記述言語)スキーマ」を使っても可能だが,OWLでは,語いに含む語句の関係などをきめ細かく定義できる。例えば,一口に「価格」といっても,内税もあれば外税もある。もしかしたら無税かもしれない。価格ではなく「値段」と表現する場合もある。このように,類義語,同義語,反対語など,語句の関係を把握することが,意味の解釈には重要になってくる。これは,人間が既知の情報との相関関係などに基づき,新たに知った語句や概念を理解していくのとよく似ている。つまりOWLは,機械に解釈できる知識情報空間を形成する役割を持つのである。

 OWLは,順調に作業が進めば,あと数カ月で標準として勧告される見込みだ。W3Cでは,2003年中にも,残されたセマンティックWeb関連仕様の標準化に着手する予定だ。具体的には,ユーザーの指示をコンピュータへの命令に変換する規則を定めた「ルール」,語いを組み合わせて論理を作り出す方法を定めた「ロジック・フレーム」,論理を解釈したときの根拠や履歴などを提示できるようにする「プルーフ」,論理などを評価した結果の信頼度を提示できるようにする「トラスト」がある。(H.J.)