米ゲートウエイは米国時間で12月10日,企業向けのグリッド・コンピューティング・サービス「Gateway Processing On Demand」を開始すると発表した。全米にある同社の直販店に置かれた店頭PCの処理能力を,ネットワーク越しに従量課金で提供する。グリッド・コンピューティングとは,地理的に分散したコンピュータを仮想的に1台の巨大コンピュータとして扱えるようにしたもの。ユーザーは,その仮想コンピュータからオンデマンドで計算能力や記憶領域を引き出せる。グリッド・コンピューティング・サービスを本格的に事業化するのは,同社が初めて。

 ゲートウエイの場合,全米272カ所に直営店があり,店頭にあるPCは8000台に上る。これらのPCは1日のうち40%程度しか稼働していない。稼働していてもデモ機として使用されるなど処理能力の多くは休眠状態にある。そこで,この8000台のPCに専用のエージェント・ソフトを導入し,データ解析などの処理を並列実行させることにより,スーパー・コンピュータに匹敵する処理能力を実現する。グリッド構築のミドルウエアには,米ユナイテッド・デバイシズの「MetaProcessor」を採用する。現状でおよそ14テラFLOPS(毎秒14兆回の浮動小数点演算が可能)に相当する性能を発揮できるという。これは,世界最高速の超高速並列計算機システムである「地球シミュレータ」(35.86テラFLOPS)の約半分の性能にあたる。

 動作概要は次のようになる。まず,各店舗のPCに,処理する業務ことに専用のエージェント・ソフトをダウンロードしておく。グリッドを管理するサーバーが,エージェント・ソフトを通じて各PCに搭載されたプロセッサやメモリー容量などの情報を取得。処理性能に応じて最適なサイズのデータをエージェント・ソフトに送り込む。エージェント・ソフトは,受け取ったデータを処理し,結果をサーバーに返す。PCの電源が切られたなどの理由で結果が戻ってこない場合には,サーバーが自動的に別のPCに該当するデータを送り,処理を実行させる仕組みになっている。

 料金は不明だが,米国メディアによると,PC1台につき1時間あたり15セントを検討しているという。(H.J.)