DSL(ディジタル加入者線)チップ・セットなどを開発する米センティリアム・コミュニケーションズは5月22日,ADSL(非対称ディジタル加入者線)の新技術「eXtremeDSL」を発表した。サービス提供地域を拡大し,最高伝送速度を高める技術である。

 eXtremeDSLには,2つの機能がある。1つは,通信速度を低くする代わりに最長伝送距離を7km程度まで引き延ばした「eXtremeReach」機能。もう1つは,伝送距離が短い場合に最高で下り10Mビット/秒などの伝送速度を実現する「eXtremeRate」機能である。

 eXtremeReachは,最長5km程度が限界とされていた伝送距離を7km程度まで引き延ばす。7km地点でも,最高200kビット/秒で伝送できるという。

 eXtremeRateは,アルゴリズムの最適化やエラー訂正の簡略化により,最高伝送速度を向上させる。NTT収容局から1.6km以内であれば最高10Mビット/秒,2.3km以内なら8Mビット/秒,4.1km以内であれば1.5Mビット/秒で伝送可能になる。エラー訂正を簡略化する仕様上,eXtremeReachを使用するような遠距離ではエラーが増大する危険があり,事実上使用できない可能性が高い。

 eXtremeDSLは,国内の多くのサービス事業者が採用するADSL仕様「G.992.1 Annex C」に共通点が多いという。使用する周波数成分がG.992.1 Annex Cに包含されており,ISDNのピンポン方式に同期して信号を送出する。TTC(電信電話技術委員会)が規定した国内のDSLスペクトル管理標準「JJ-100.01」にも適合する可能性があるとしている。

 伝送距離を引き延ばすDSL技術はすでに存在していたが,JJ-100.01に適合しているかどうかは微妙なケースが多かった。米パラダイン・ネットワークスが開発しBBテクノロジーがYahoo! BBに採用している「ReachDSL」,米グローブスパンビラータが開発しアッカネットワークスが採用予定の「C.X」などは,下りの伝送にノイズなどの影響を受けやすい高周波数帯ではなく,低周波数帯を使用する。下りの信号が減衰しづらい分だけ遠距離でもリンク可能になるが,上りの伝送速度が犠牲になる,G.992.1 Annex Cなど他の通信に干渉する危険がある--などの可能性が指摘されていた。eXtremeDSLは,「これらの問題を解決した」(アクセス・ビジネス・ユニットのドリー・ブラウン氏)としている。(H.J.)