あるWebサイトにアクセスする。クライアントのメモリー上にウイルスやバックドア・プログラムが常駐している場合には,エンドユーザーに警告を表示し,それらを駆除する。さらに,そのWebサイトを利用中に何者かがクライアントに不正アクセスを仕掛けた場合には,それを防ぎ,エンドユーザーに警告する--。

 そんなWebサイトを構築可能にするサービスが始まる。不正プログラムに感染したクライアントがECサイトやインターネット・バンキング・サイトにアクセスしてくるのを防ぐ,自社サイトの利用時にクライアントが誰かの不正アクセスや攻撃を受けないように保護する--などの目的で利用できるサービスだ。スペースジオは5月中旬に,メトロは5月下旬に,それぞれサービスを開始する予定。両社はともに,韓国のインカインターネットが開発した「nProtect」というシステムを利用し,サービスを提供する。

 nProtectサービスを利用するWebサイトは,エンドユーザーに対して次のようなサービスを提供可能になる。(1)クライアントのメモリーに常駐したウイルスやバックドアなどの不正プログラムを検出し除去する,(2)クライアントのメモリーを監視して不正プログラムが読み込まれることを防ぐ,(3)クライアントのTCP/UDPポートを監視して不正アクセスを防ぎ警告する--である。ちょうど,エンドユーザーのクライアントに「パーソナル・ファイアウォール」や「ウイルス・チェック・ツール」の機能を提供するようなイメージだ。エンドユーザーが望めば,クライアントのハード・ディスク上にあるすべてのファイルを検証することも可能である。nProtectサービスでは,こうした機能を提供するセキュリティ・ソフトを,インターネット上からオンラインで自動的にインストールできる仕掛けになっている。

 具体的な仕組みは,こうだ。セキュリティ・ソフトは,ActiveXコンポーネントやNetscapeプラグインとして実装されており,スペースジオやメトロのサーバー上で公開されている。nProtectサービスを利用する事業者は,守りたいWebページに,あらかじめセキュリティ・ソフトを呼び出す<OBJECT>タグやJavaScriptなどを追加しておく。あとは,クライアントがそのWebページにアクセスするだけで,自動的にクライアント側にセキュリティ・ソフトがインストールされ,実行される。セキュリティ・ソフトは,スペースジオやメトロのサーバー上で提供される新しいパターン・データなどを自動取得する機能も搭載する。このため,エンドユーザーが最新のパターン・ファイルを取得するなどの管理に気を配る必要もなくなる。

 サービスを利用するエンドユーザーは,ActiveXコンポーネントやNetscapeプラグインに対応したWebブラウザを使う必要がある。具体的には,Internet Explorer5.0(IE5)以降でActiveXコントロールの実行を有効にしておくか,Netscape Navigator4.75以降を使用する。ちなみに,ダウンロードするセキュリティ・ソフトのサイズは,パターン・データを含んで600Kバイト程度である。

 サービスの利用価格は,セキュリティ・ソフトをダウンロードできるようにするWebサーバーの台数によって変わってくる。例えば,1~5台であれば1台あたり月額250万,6~10台であれば月額200万円など(ともにメトロの場合)。この場合,エンドユーザー数は無制限である。

 韓国ではすでに,國民銀行(韓国最大の銀行),サムスン・カード,LG電子,アシアナ航空,ハナロ通信,SKテレコムなどがnProtectサービスを利用している。現在,1日に約500万件のセキュリティ・チェックを実行している実績があるという。

 なお,スペースジオとメトロは両社とも,同様のサービスをLAN内で提供可能にするパッケージ・ソフトを販売する。ユーザー企業は,nProtectシステムを構築するためのソフトウエアを購入し,LAN内でサービスを運用可能になる。パッケージとしてソフトウエアを購入する場合の価格は,ウイルスのパターン・ファイルの更新といった保守料金を含め,100エンドユーザーあたり年間約60万円(メトロの場合)。ユーザー数が増えた場合には割引料金もある。(H.J.)