米インクトゥミ(Inktomi)は2月27日,いわゆるラスト1マイル(アクセス回線部分)のコンテンツ配信のレスポンスを向上させる新製品を発売した。「Personal Edge」と呼ぶソフトウエア・スイートで,パフォーマンスを30%以上向上させられるという。特に,動的に生成されるWebページや頻繁に内容が更新されるコンテンツを利用する場合に効果が高い。主にISPやアクセス回線事業者などに向けた製品で,すでに米アメリカ・オンライン(AOL)が導入を決めている。

 特徴は,ISPのネットワークのエッジに設置されたキャッシュ・サーバーからエンドユーザーに対して送信するデータ量を減らす点。同社の「差分圧縮」(ディファレンシャル・コンプレッション)という技術を使い,キャッシュ・サーバー側でWebコンテンツの更新された情報だけを抜き出し,エンドユーザーに配信する。製品は,エンドユーザーのPC上で稼働する「Personal Edge Agent」(PE Agent),コンテンツの差分を算出する「Personal Edge Page Server」(PE Page Server),キャッシュ・サーバー(Traffic Server)とPE Page Server,あるいはPE Agentの連携を実現する「Personal Edge Extension」という3つのコンポーネントで構成されている。

 ISPのネットワーク上にTraffic Serverが設置されているとしよう。クライアントからWebサイトへのアクセス要求があると,Traffic Serverはキャッシュを参照し,そこに該当コンテンツがなければオリジナルのサイトからコンテンツを取得し,エンドユーザーに転送。同時に,コンテンツをキャッシュする。ここまでは,通常のキャッシュ・サーバーとまったく同じ。違いはここからだ。Traffic ServerにアドオンされたPE Extensionは,当該コンテンツに対するアクセス要求と応答の両方をPE Page Serverに送信する。この動作が数回繰り返されると,PE Page Serverは,受け取ったコンテンツから変更されていない部分を検出し,リファレンスとなる「ベース・ページ」を生成し,Traffic Serverに返す。

 別のユーザーから同じコンテンツへのアクセス要求があると,Traffic Serverはオリジナルのコンテンツを取得し,ベース・ページと比較。エンドユーザー(PE Agent)には,ベース・ページと差分情報という2つのデータを返信する。同じユーザーからのアクセス要求に対しては,差分情報だけを送信する。PE Agentは,Webブラウザのローカル・キャッシュに格納されたベース・ページと,受信した差分情報を組み合わせて,最新のWebページを再現する。これに似た差分圧縮の手法は,米ファイングラウンド・ネットワークス(FineGround Networks)が「Condensor」というWebアクセラレータ製品に実装している(日本ではまだ販売されていない)。これと比べると,PEには,エンドユーザーがPE Agentをインストールしていなければ利用できないという弱点があることは否めない。(Y.K.)