インターネットITS(高度道路交通システム)の実証実験が,2月8日,神奈川県川崎市で一般ユーザーを対象に始まった。慶応義塾大学SFC研究所とトヨタ自動車,デンソー,NECの共同研究グループが進めている研究の一環である。サーバーや各種センサーを搭載した高機能実験車を70台用意。一般公募したモニターが3月末まで試乗する。

 ITSは,自動車と道路およびその周辺,あるいは自動車同士での情報交換を可能にするシステム。主な用途は,ナビゲーション・システムの高度化,有料道路の自動料金収受,安全運転の支援,交通管理の最適化,道路管理の効率化などである。共同研究グループは,インターネットを活用したITSの共通基盤を構築すべく,2001年4月から技術開発を進めてきた。2002年1月28日に,名古屋で,タクシーを対象とした実証実験を始めたが,一般ユーザーを対象とした実験は今回が初めて。

 川崎での実験の目的は,インターネットITS基盤の技術面の検証と,車両から集められる情報の有効性の検証,そして自動車の機能としての有効性の検証である。技術面では,車載システムのIPv6およびモバイルIPv6による通信,ETC(有料道路自動料金収受システム)にも利用されている無線通信のDSRC(専用短距離通信)を利用したIP通信,音声インタフェースなどの実用性を検証する。高機能実験社には,Linuxベースの車載サーバーのほか,GPS(グローバル・ポジショニング・システム)のアンテナ,DSRC通信機,携帯電話網(DoPa)の通信機,タッチ・パネル付きの液晶ディスプレイを搭載した。

 実証実験で実施するサービスは主に次の4項目。(1)ガソリン・スタンドでのサービス・ガイダンスとコンテンツ配信,(2)駐車場での電子決済やコンテンツ配信,(3)走行中のコンテンツ配信,(4)ユーザーの操作によるコンテンツの提供--である。ガソリン・スタンドや駐車場には,DSRCの通信機器を設置(日石三菱とパーク24が協力)。DSRC経由でインターネットに接続し,情報検索などを利用できる。また,ガソリン・スタンドでは,カー・ケア情報などのコンテンツを,DSRC経由で車載システムにプッシュ配信する。駐車場では,川崎駅前商店街の情報などを配信するほか,ビットワレットの「Edy」を使った電子決済を実現する。(Y.K.)