ノベルは12月7日から,米ボレラ(Volera)のコンテンツ・デリバリ・ネットワーク(CDN)関連製品を国内で正式に販売する。ボレラは米ノベルがキャッシュ・サーバーの開発・販売部隊を独立させた子会社。日本では,ノベルがディストリビュータとして「Volera Velocity CDN」と呼ぶキャッシュ製品群を販売する。CDNは,Webアクセスなどを高速化するための仕組み。ネットワーク上のあちこちにキャッシュ・サーバーを分散配置してコンテンツを蓄積。エンドユーザーに対して,最寄りのキャッシュから応答を返す。ネットワークの伝送遅延を短縮できるうえ,サーバーの負荷も軽くなるため,高速レスポンスを実現しやすくなる。ボレラは,このためのキャッシュ製品を提供する。

 Velocity CDNは,6種類の製品群で構成される。このうち,12月に出荷するのはキャッシュ・サーバー・ソフトの「Excelerator」と,Exceleratorにアドオンして利用するアクセラレータ2種類。具体的には,RealMediaやWindowsMediaといったストリーミング・コンテンツのキャッシュ機能を提供する「Media Excelerator」と,SSL(セキュア・ソケット・レイヤー)処理を高速化する「Secure Excelerator」である。このほか,2002年3月にはCDNの管理ツールを発売する。管理ツールは,「ネットワーク上のどこでキャッシュが稼働しているか」を管理する「System Controller」,「どのキャッシュにどんなコンテンツが蓄積されているか」や「いつ,どのコンテンツを,どこに配信するか」といったコンテンツの状態を管理する「Content Controller」,コンテンツ配信の利用レポートなどを作成する「Content Accountant」の3種類。システム/コンテンツ管理ツールは,管理エンジンとしてディレクトリ・システムのNDS(Novell Directory Services)を利用している。価格は,いずれも未定。

 ただし,今回発表したVelocity CDNの製品群には,CDNの特徴の1つであるコンテンツ・ルーティングを実現するツールが含まれていない。コンテンツ・ルーティングは,エンドユーザーからのアクセス要求を,そのユーザーに最寄りのキャッシュに自動転送する仕組み。この点に関してボレラは,当面,同社の出資会社でもあるカナダのノーテル・ネットワークスの製品と組み合わせてスイート製品として提供することを考えている。また,将来的にはコンテンツ・ルーティング用の製品も開発する方針である。

 ボレラは設立当初,データセンター事業者の米エクソダス・コミュニケーションズ向けに「コンテンツ・エクスチェンジ」と呼ぶCDNサービスを提供していたが,エクソダスの破産をはじめとする状況の変化に伴って,サービス継続を断念。代わりに,コンテンツ・エクスチェンジ実現に際して蓄えたCDN構築・運用のノウハウを武器に,サービス・プロバイダや企業内システム向けに製品を提供する。中でもボレラが注力しているのが,企業が自前で構築するプライベートCDNの市場。コンテンツ提供者がCDNを利用する場合,米アカマイ・テクノロジズなどサービス・プロバイダによるCDNサービスを利用する手がある。ただ,「米CNNなど,いくつかのコンテンツ提供者は,料金の高さからCDNサービスの利用をあきらめ,インターネット上でプライベートCDNを構築し始めている」(ワールドワイドのセールス担当副社長であるジェラルド・キング氏)。また,企業内でも,eラーニングなどリッチ・コンテンツを使うアプリケーションが増え始め,社内CDNを構築する動きがある。こうした背景から,ボレラは企業のプライベートCDNの市場を重視する。(Y.K.)