米国のベンチャ企業コンティキ(Kontiki)は,8月6日,新しいタイプのCDN(コンテンツ・デリバリ・ネットワーク)サービス「Kontiki Delivery Network」を開始する計画を明らかにした。ソフトウエア・ベースで,多数のエンドユーザーのPCを仮想的な1つのキャッシュ・サーバーとして利用するピア・ツー・ピア(PtoP)型のCDNである。米国でのサービス開始は2001年秋としている。

 コンティキが主なサービス対象としているのは,ビデオや音楽,各種ソフトウエア,ゲームといったディジタル・メディアを配信したいと考える事業者である。あるユーザーがコンテンツを取得すると,コンティキが運用する管理システムが,次にアクセスしてきたユーザーのリクエストをそのPCに転送する。例えば同じ企業内の複数のユーザーが同じコンテンツにアクセスしたとすると,最初の1人以外は,社内ネットワーク上でコンテンツを取得できることになる。このため,コンテンツ配信を高速化しやすい。

 実際には,同社はサービス開始の計画を発表しただけで,具体的な内容や仕様はまだわからない。ただ,ベースになる技術をまとめてみると,サービスの概要が見えてくる。サービスの特徴は主に3つある。1つは,コンテンツをオンデマンドで提供するだけでなく,リリース前のコンテンツのリストの予約を受け付けておいてスケジュール配信する点。もう1つは,クライアントにプラグインのような形で専用ソフトを搭載し,このソフト間(クライアント間)でコンテンツをバケツ・リレー的にコピーすることで,エッジ側での配信を実現する点。3つ目は,クライアント・ソフトにコピーされたコンテンツをサービス側が集中管理し,これをキャッシュとして使ってCDNを実現する点である。

 インターネット上のトラフィックは,特定の時間帯にピークが生じる傾向がある。このピーク時にコンテンツを取得しようとしても,当然,ネットワークのスループットは上がらない。そこでコンティキは,コンテンツ配信をできるだけスケジュール化してプッシュ配信する。ピーク時を避けて配信することで,トラフィックを平準化する(タイム・シフティング)。こうしてコンテンツ配信を受けたクライアントは,同じコンテンツを予約している最寄りのクライアントに対して,さらにコンテンツをコピーする。「アウター・エッジ・リレー・キャッシング」と呼ぶ技術で,これを繰り返すことで,サーバーやバックボーンに負担をかけずに多数のクライアントへの配信を実現する。

 もちろん,予約せずにオンデマンドでコンテンツを取得するユーザーもある。こうしたユーザーには前述の仕組みは効果がない。そこで,配信を受けた各クライアントがキャッシュ・サーバーとして動作する仕組みを持たせる。コンティキ側では,すべてのクライアントと配信されたコンテンツ,それぞれのクライアントのレスポンス時間や利用可能な帯域幅などを,「セキュア・ディストリビューティド・ネットワーク・マネージメント・プロトコル」という独自プロトコルを使って一元管理する。オンデマンドでコンテンツへのアクセス要求があると,管理サーバーが,そのユーザーの近くでどこにコンテンツがあるかを検索し,そこにアクセス要求を転送(アウター・エッジ・オンデマンド・キャッシング)。最寄りのクライアントからコンテンツを取得できるため,高速なレスポンスを期待できる。(Y.K.)