NTTデータNTTデータテクノロジは7月17日,人間のDNA(デオキシリボ核酸)情報を使った認証システムを開発したと発表した。人間の身体的な特徴を用いたバイオメトリクス認証の技術としては「指紋認証」や「声紋認証」などが有力視されているが,低価格で手軽に実現できる半面,認識率の低さを指摘する声もあった。DNA情報を用いる認証方式は,情報採取と分析に時間と費用がかかるなどの課題はあるものの,各個人で異なる塩基配列というディジタル情報を用いるため,認識率が極めて高く,時間が経過しても情報は変化しないという特徴がある。

 今回の認証システムで利用するDNA情報は,STR(ショート・タンデム・リピート)という領域から生成した「DNA-ID」という値である。STRは,短い塩基配列のくり返しであり,そのくり返し回数は人によって異なる。そこで,複数箇所のSTRから塩基配列のくり返し回数を取得し,それを並べてDNA-IDにする。STRは遺伝子以外の情報を格納しており,病気や人体の構造などとは無関係とされている部分である。

 今回開発したシステムは,ブランド品などが本物であることを証明するための「物品認証システム」とDNA-IDを含んだ暗号カギをICカードに格納して個人認証に使う「DNA実印ICカード」の2つ。

 物品認証システムでは,例えば,メーカーの社長など特定個人のDNA-IDを2次元バーコード化して認証マークを作成し,製品などに張り付けたり印刷したりする。2次元バーコードとは,従来の1次元バーコードより小さいスペースに,より多くの情報を格納可能なバーコードのことで,米国では軍人の認識票や自動車運転免許証などに印刷して偽造品の検出に利用することもある。認証マークからDNA-IDを読み取り,あらかじめ登録しておいたオリジナルのDNA-IDと照合することで本物であるかを判定する。認証マーク自体の偽造を防ぐため,認証マークの印刷に実際のDNAを溶解または混入させた特殊インクなどを使う。

 DNA実印ICカードには,DNA-IDを用いて生成した秘密カギと公開カギを格納しておく。秘密カギと暗号カギに本人のものであるという情報が含まれるため,より高い精度の個人認証システムとして使える可能性がある。

 DNA情報による認証には,まだまだ課題も多い。例えば,STRが本当に重要な情報を含んでいないか,という点もまだ明確ではない。DNA情報の分析に時間と費用がかかるという問題もある。今後NTTデータ・グループは,これらの課題などを考慮して,特に高いレベルのセキュリティを必要とする業務向けに,研究と製品化を進める計画であるという。(H.J.)