「システム開発途中の変更案件は,特定のエンジニアに集中しがちだ。個人任せにしていると,そのエンジニアがつぶれてしまうことが少なくない。変更管理の仕組みをきっちりと開発現場に作り,根本的な対策が可能になるようにすべきだ」。日本IBMでいくつもの大規模プロジェクトを指揮し,現在はプロジェクト・マネジャの育成にもあたっている岡村正司PMリサーチ代表取締役は,システム開発現場が抱える大きな問題の一つとして,変更管理の仕組みがあまり確立していないことを挙げる。

 開発途中で膨大な変更作業に悩まされるプロジェクトは多い。その原因は,仕様変更であったり,追加開発であったり,品質の問題を解決するための変更だったりする。どの場合でも,特定のプロジェクト・マネジャやリーダーなどの担当者に変更作業の負荷が集中しがちだ。

 このため,変更が発生している原因を調べて問題解決を図り,同時にプロジェクト・マネジャやリーダーの負荷が限界を超えないように,負荷を調整することがプロジェクト全体で必要になる。しかし,現在は「変更がいつどこで発生しているのか把握する仕組みがない場合が多い。それでは,変更の原因やメンバーの負荷を把握するのは難しい」(岡村氏)。

 そこで岡村氏らは現場の開発状況を把握できるように「PMS(プロジェクトマネジメント・システム)」を,グループウエアを使って独自開発した(画面参照)。変更案件の起票・承認・担当割り当て,実際の作業などを,成果物とともにPMSに格納する。プロジェクト・マネジャは担当者や変更理由,契約区分別に変更案件の進捗状況などを確認できる。

 各データを分析・ドリルダウンしていけば,変更の原因が見えてくるし,特定のエンジニアへの作業の集中も避けられるようになる。「PMSによってプロジェクトを可視化することが,変更管理には不可欠。PMSがあれば多くの変更案件を抱えていたとしても,問題なくプロジェクトを進めることができる」と岡村氏は述べる。

(安保秀雄=日経ITプロフェッショナル)