第39回 システム監査技術者
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| 試験の名称と概要: | システム監査技術者 被監査部門から独立した視点で,情報システムが経営に貢献しているかどうかを安全性,効率性,信頼性,可用性,機密性,保全性,有用性,戦略性などから総合的に調査し,判断基準に照らして評価して問題点について改善勧告を行う者を対象とする試験。一口で言うと,IT業界の公認会計士試験とも言える。ITガバナンス(IT統治)の適切さ,すなわちIT投資の適切性や情報セキュリティの状態を内部監査できる能力を問う。http://www.jitec.jp/1_11seido/h13/au.html |
| 筆者略歴: | 加藤 忠宏(かとう ただひろ) アイ・リンク・コンサルタント代表取締役。特に企業間電子商取引(BtoB)型Webシステムの構築を得意分野とする。その実績に基づく論文で,中小企業経営診断シンポジウムの1997年および2001年中小企業庁長官賞を受賞。著書35冊。保有資格は中小企業診断士,システムアナリスト,システム監査技術者,プロジェクトマネージャ,上級システムアドミニストレータ,情報セキュリティアドミニストレータ,ISO9000審査員補。 |
2004年6月の深夜,出張先から戻った私は,会社のパソコンから情報処理技術者試験センターのサイトへアクセスした。システム監査技術者の合格発表を確認するためである。試験場コードをクリックすると,静岡の会場では合格者数は3人。「あった!」。誰もいない深夜の会社で一人微笑んだ。「長かった」「もう試験を受けなくてすむ」「これで新しい人生に歩み出すことができる」…。そんな気持ちが交錯した。
どうして「システム監査技術者」だけ受からない?
システム監査技術者(以下AU)試験との格闘は,実に5回に及ぶ。それまで私は,中小企業診断士[情報部門]を32歳の若さで合格したのを皮切りに,システムアナリスト(AN),上級システムアドミニストレータ(SD),情報セキュリティアドミニストレータ(SS)など多く試験を,一度の受験で次々にクリアしてきた。こんなに何度も不合格になったのはAUだけだった。
初めてAUを受験したのは,1991年。当時としては珍しく若年で,かつ合格者の少ない中小企業診断士[情報部門]に独学で合格した私は,「何でもかかって来い!」という気分だった。だから同じような論文試験のAUも,コンサルタントの立場から論文を書き上げて一人で悦に入っていた。だが,結果は不合格だった。
1997年の3回目の受験のときもそうだった。このときはANとSDという,いずれも論文を書く難関試験にたて続けに合格したことで,おおいに自信がつき,気分が乗っていた。その上,企業研修の論文講師として活動領域を広げていたので,すっかり「論文を究めた」気でいた。AUの合否は論文で決まる。当時,独立したばかりの私は多忙な日々を送っており,受験勉強をする時間があまりとれなかった。しかし企業の業務監査を実施した経験があったので「大丈夫だろう」と高をくくり,無謀にも「システム監査基準」すら暗記せずに受験した。そして結果は,惨敗だった。
「動中の禅」では通用しない!
何も勉強せずに試験を受けるのは無謀だと思われるかもしれない。だが,これが「俺流(おれりゅう)」だった。「実務家は実務の中で学ぶ,それが『動中の禅』(注1) さ」。そうやって,私はANもSDもSSもPMも,ほとんど受験対策をせずに合格してきた。
(注1)練達の導師は静かに座禅を組まずとも,活動の中で座禅の効果を得る,という意味。
しかし2003年,4回目の不合格が分かったときには,さすがにこれはおかしいと気づいた。このときは,既にSSに合格しセキュリティ知識を習得していることも立証されていたし,「システム監査基準」もちゃんと暗記していた。自分の中ではもはや合格は鉄板のごとく確固たるものになっていた。しかし,結果は不合格。とうとう,何を信じてよいか分からなくなってしまった。
先輩の助言に,何かが閃く
そこで既にAUに合格している知人たちに相談してみた。
| ● | 公認会計士の助言——「あなたの考え方は間違っていない」 「システム監査基準に準拠しているあなたの考え方は間違っていません」と言われ,この点は安心した。 | |
| ● | 仲間の中小企業診断士の助言——「あの試験だけ変わっているのだ」 どう変わっているのか彼自身もうまく説明できないようだったが,何だかよく分かる気がした。 | |
| ● | 先輩の中小企業診断士の助言——「客観性が必要だよ」 「論文における客観性の不足しか考えられない」との言葉に,何かが閃いた。 |
今まで受けてきた多くの試験を通じて,論文試験にはそれぞれ個性があることに気づいていた。システム監査技術者試験の場合,主観を排し,システム監査基準や企業会計原則,商法などをバイブルとして論文を記述することが原則ではないだろうか。先輩が言った「客観性」とは,おそらくそのことだろう。システムアナリスト試験の論文のように,実務経験からあれこれ細かな点まで判断して,「面倒見の良い」論文を書いてはいけない。それでは,客観性が損なわれてしまうのだ。
合格のための論文対策
そう気がついた私は,論文試験の「設問ア」「設問イ」「設問ウ」について,3つ の作戦を立てた。通常,論文試験では「設問ア」で業務やシステムの目的や概要を 800字以内で説明し,「設問イ」で「設問ア」の具体的な内容を,そして「設問ウ」 でそのまとめを論述する。
作戦1.「システム監査基準」を暗記して,設問イや設問ウは,それに準じて書く。
作戦2. 設問イの字数が多すぎると合格できない。よって,ANよりやや抽象的にして少なめに書く。
作戦3. 設問ウのボリュームをANより多く,丁寧に書く。
そして2004年4月,本番がやってきた。問1〜問3のうちから1問を選択するのだが,まず問1を選択しようと考えた。しかし,問題のテーマである「保証型監査」の知識に乏しく,合格論文を書くことに不安を覚えた。問2も馴染みがなかったので,問3の「IT投資計画の監査」を選択することにした。設問の配分に気をつけながら,私は全力で取り組んだ。しかし時間が切迫し,設問ア〜ウ全部で最大4000字を要求される論文で,2600字しか書けなかった。「またダメか…」。
しかし,結果は合格だった。おそらく,字数が少なかったことが幸いして,結果的にコンパクトにまとまり,ポイントも分かりやすく,客観的な答案になったからだろう。結果オーライだ。こうして,13年に及ぶ私とAUとの長い長い戦いは終わりを告げた。