横須賀中央駅にある役所屋の写真
市内3カ所に設置された「役所屋」。携帯サイトで予約した住民票の写しをここで受け取れるようにする(写真は横須賀中央駅にある役所屋)

 神奈川県横須賀市は、携帯電話用のWebサイト「よこすかシティナビ」から住民票の写し交付の予約ができるサービスを2005年9月1日から開始する。8月18日に同市が発表した。予約した住民票の写しは、市内3カ所にある市役所のサービス窓口「役所屋」(京浜急行横須賀中央駅、同久里浜駅、同追浜駅に設置)で受け取ることができる。役所屋の営業時間は10時から19時30分まで年中無休。住民票を受け取るために平日の昼間に市役所に出向かずに済み、受け取りに必要な待ち時間も短縮できる。

 市の携帯サイトから住民票の写しの予約ができるのは本人か同一世帯の人のみ。携帯サイトにアクセスして、住民票の写しの受け取り場所(3カ所の役所屋の中から指定)、交付希望日時、申請者の住所氏名、生年月日、連絡先、記載事項、枚数、住民票を使う人や受取人が申請者と別の場合、その人の氏名と連絡先などを入力する。あとは指定した時間以降に希望の受け取り場所に行き、予約完了時に提示される予約番号と身分証明書の提示や手数料(300円)を支払うことで住民票を受け取ることができる。予約から受け取りまでは最短で30分、予約日から7日後までの間で受け取り時間を指定できる。予約の受付は24時間年中無休で対応している。構築費用は2百数十万円。

 今回横須賀市が発表したサービスは、住民票の写しの交付ではなく、交付の予約という位置付け。パソコンによる予約サービスは群馬県太田市で例があるが、窓口での事前登録が必要となっている。事前登録が不要で携帯サイトで手続きできるようにした例は「おそらく全国初」(横須賀市情報政策課)だという。

 また、電子申請で住民票の写し交付を受け付けている自治体は既にいくつか存在するが、手数料の支払いが発生するため、結局は申請者が役所まで出向かなくてはならないケースが多い。一部自治体では郵送サービスも行われているが(東京都荒川区など)、急ぎで書類が必要な場合はやはり窓口に出向く必要がある。しかも、電子申請の場合、厳密な本人確認を要するため申請者は公的個人認証を取得し、住基カードパソコン、およびICカードリーダーを用意する必要がある。現在のところ、公的個人認証を利用した電子申請の利用は少なく、『日経パソコン』が全国2091市区町村にアンケート調査を実施してまとめた「e都市ランキング2005」によると、2004年の住民票の写しの交付における電子申請の利用件数は最大でも27件、大多数の自治体が年間数件にとどまっているという。

 横須賀市の方式は予約時点では厳密な本人確認の必要がないため、申請者はより手軽にインターネットを利用してサービスを受けることができる。横須賀市では今回の携帯サイトを使ったサービスについて「パソコンでも同様のサービスを提供することができるが、携帯電話の方が普及率が高いことから、より効果が見込まれる携帯サイトからサービスをまず始めた。若い世代に利用してもらいたいという狙いもある。携帯電話を使ったサービスは今後さらに充実させていきたい」としている。パソコンでの住民票の写しの交付予約サービスに関しては、普及状況を見ながら検討する。今回の携帯サイトによるサービスがどの程度利用されるかは未知数だが、利用のしやすさ、構築コストの安さの両面で、注目すべきサービスと言えるだろう。

(塗谷隆弘)