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協議会の様子

 電子政府や電子自治体の利活用を民間の立場から考え提言する団体の一つである関東電子政府推進員協議会の第1回会合が、7月28日に開催された。東京のホテルニューオータニで開催中の「電子政府・自治体戦略会議」(日本経済新聞社主催)のプログラムの一つとして公開会議の形で執り行われたもの。

 電子政府推進員とは、2004年9月の各府省情報化統括責任者(CIO)連絡会議での決定に基づき発足した制度。全国を9地域に分け、それぞれの地域のITオピニオンリーダー(学識経験者など)、および司法書士、税理士、社会保険労務士、行政書士など民間人計250人(関東は52人)に総務省が嘱託するもの。民間の立場から電子政府の利用促進に向けた提言をすること、電子政府の普及促進の手助けの役割を果たすことが期待されている。

 午後4時30分から始まった協議会では、まず総務省の藤井昭夫行政管理局長から代表の6人に嘱託状が送られた後、千葉商科大学瀧上信光教授を司会として6人の推進員によるプレゼンテーションが行われ、電子申請の課題が浮き彫りとなった。

 電子政府コンサルタントの牟田学氏は「民間のオンラインサービスは着実にレベルアップしているのに、電子政府は市民の期待するものとかけ離れているために全然利用されない、もっと利用者から見てわかりやすいメリットを示すべき」「良い点、悪い点を包み隠さず公開するなど住民とのコミュニケーションを図り、改善すべき点は改善して信頼され、理解される電子政府を作る必要がある」と述べた。

 日本司法書士会連合会の佐藤純通氏は「紙の申請で実印に相当する電子署名鍵が一人の人間に複数発行されたり、ファイルとして発行されるためコピーの危険がある。ICカードなど、物理的な唯一性が保てるものにするなどの改善をすべきだ」と述べた。

 東京税理士会の森谷修一氏は「電子申告、電子納税のシステムは税理士会と国税庁が連絡を密に取り合いながら整いつつあるが、税額が割安になるわけでもなければ、添付書類は紙で別送する必要があるなど、まだまだ問題が多い。利用者が“得した”と感じるような制度になるまで改善を続ける必要があると語った」と必要があると語った。

 全国社会保険労務士会連合会の大野実氏は「国が扱う法令手続きの7.2%は社会保険労務士が関わるもの。電子申請推進には社会保険労務士が率先して動かねばならない。しかし、現状の制度では事業主、申請者、医者、社労士の全員が電子署名を持っていないと申請できないなどの問題がある。添付書類の省略や複数署名の省略が進めば、電子申請は普及するのではないか」と述べた。

 東京行政書士会の古屋亨氏によると、行政書士が利用する電子申請では、国土交通省の特殊車両通行許可などは添付書類の電子化も認められ、年間10万件以上が既にオンラインで申請されているという。ただし、「情報リテラシー弱者のためにも、代理人による申請システムの構築が必要。また、委任状の提出方法もまだ未整備の部分が多い」と指摘した。

 その後、同じく推進員であるITオピニオンリーダーからは「電子政府が進んでも“士業”の人の事務所に住民が出向かなければいけないのならば意味がない」「電子化した申請の数が増えても申請件数は上がらない。電子化するメリットがある申請から電子化すればいいのではないか」「電子申請により“士業”の必要性が薄れるほどの申請の簡素化こそが電子申請の大前提なのではないか」などの課題が指摘されていた。

(塗谷隆弘)