■神奈川県川崎市は10月1日、市役所の事務の電子化に合わせて、電子決裁システムに指紋認証を導入した。最近、「なりすまし」防止のために自治体で指紋認証システムを採用するケースが増えており、すでにいくつかの自治体で導入済だが、政令指定都市では川崎市が初めて。(文:鳥田泰正=編集部)


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 神奈川県川崎市は、決裁権を持つ課長職以上の約1300人の職員を対象に、職員の本人確認の認証に指紋認証を導入した。今のところ、指紋認証を行っているのは旅費の電子決裁のみだが、来年2003年4月から本格的に稼動する「行政情報システム」での電子決裁で全面的に使用される。

指紋認証装置

認証装置に軽く指を置くだけで認証が行われる。
 川崎市の「行政情報システム」は、文書管理システム、総合財務会計システム、旅費管理システムから成り、電子決裁の機能を備える。文書管理システムは、公文書の目録管理や文書の保存、保存文書の検索など公文書を管理する。総合財務会計システムは、予算管理、資金管理、公金管理など市の財務部門を管理する。旅費管理は出張旅費の申請や支払いなどを管理する。なお、一般職員は指紋認証ではなくIDとパスワードで認証を行う。コストとの兼ね合いもあり、今回は決裁権のある課長級以上の職員を対象に指紋認証装置を導入したのである。

川崎市総務局情報管理部行政情報課 西之坊行宏氏
川崎市総務局情報管理部
行政情報課 西之坊行宏氏

 「行政情報システム」の総予算は約2億円。システム全体として見積もりを取ったため、指紋認証の部分についてのみ切り分けてのシステム開発費は不明だが、指紋認証装置のハードウエアは5年リースで約4000万円で契約している。「万一、不正に金銭の決裁が行われた場合の被害を考えれば、決して高い投資ではないと思います」と、川崎市総務局情報管理部行政情報課の西之坊行宏氏は説明する。

 行政事務を電子化した場合、第三者が他人のID、パスワードを無断で使用して本人のフリをして不正を行う「成りすまし」対策は重要だ。川崎市が指紋認証を導入した背景には「(行政情報システムが計画計画されていた当時)ある自治体で部下が上司のパスワードを無断使用して公金が不正支出された事件が発生した」(西之坊氏)こともあったという。成りすましによって高額の財務の決裁が行われたり、データの漏えいが発生してしまうと、金銭的被害のみならず行政の信用問題にもつながり、その損害は計り知れない。そこで、従来採用していたID・パスワードや磁気カードなどより厳格な認証システムである指紋認証に注目したのである。

■川崎市行政情報システム
川崎市行政情報システム関連図

行政情報システムは「文書管理システム」「総合財務会計システム」「旅行管理システム」から成る。現在、旅費管理システムのみ一次稼動中。システム全体の本格稼動は2003年4月を予定している。