取りまとめセッション
モデレータ  日経コンピュータ編集長 横田 英史

取りまとめセッションの様子

取りまとめセッションの様子

 会議の締めくくりとして行われたのが、この「とりまとめセッション」だ。まず、セッションの冒頭で横田氏は、先に行われた「CIOに関するアンケート調査結果」において、日本では半数以上の都道府県でCIOが置かれていないことに注目。これに対し、全米知事会州情報化プログラムディレクターのトム・C・ルーベル氏は「米国でも、元々は広範なCTO(最高技術責任者)のような位置付けで、今ほど権限を持っていない技術的な職務中心であったものが、ここ5~6年くらいで徐々に権限がアップしていき、CIOとなった」と米国の状況を説明した。 (文:山田 哲也(イデア・ビレッジ))

■CIOに必要な能力とは???議会を説得する米国のCIO

 岐阜県知事公室参与の佐々木浩氏は、「CIOはこれからどんどん増えていくのではないか。現在の日本では、“いわゆる情報システム課の仕事“と“CIOの仕事”との違いは何かを模索している段階で、CIOと名乗ることに逡巡している人もいるのではないか」と指摘した上で、CIOに求められる権限として「部局長クラスに直接交渉して調整ができること」を挙げた。

 ケンタッキー州CIOのアルドナ・K・ヴァリセンティ氏は、米国でCIOに求められている能力として「知事のパートナーとしての仕事をきちんと果たすこと。技術者と組織のリーダーの間で重要な役割を果たすことだ」と説明、知事と信頼関係の構築が重要であることを強調した。また、必ずしもテクノロジーに精通しているわけではない州議会議員がいろいろ口出しをてくることがあるが、「CIOは自らイニシアティブをとらなくてはいけない」と説き、IT政策においての舵取りがCIOの大きな仕事であることを示した。

■話題はBPRの進め方、ベンダーとの付き合い方などへ

 CIOの出身母体は様々だ。総務省(旧自治省)出身である岐阜県CIOの佐々木氏は、その経験を生かして「テクノロジーというよりも政策面での調整に力を注いでいる」と発言。これに対して、民間から福岡県の情報企画監に転身した溝江言彦氏は、「私は民間から来ているので行政についてはアマチュアです。行政をどうやってIT面で補佐するかが、私の一番大きな仕事。CIOというよりもCTOという立場に近い」と説明した。業務を進めていく上では、「福岡県の場合、情報企画官を知事が直接面接して採用したという影響力で業務の補佐ができた部分があった」と続けた。

 次に、BPRのためにITを導入する場合のCIOの役割について話題が移った。三重県では、電子申請や総合文書管理の導入を機会にBPRを推進しているが、この1年間で一番苦労したのは現場の説得だったと言う。三重県地域振興部業務プロセス革新プロジェクトグループ推進監の土井秀尚氏は、「CIOは全体のコンセプトを提示し、それを現場に降ろすわけですが、日々の仕事のやり方がちょっとでも変わると、現場からはクレームが出る。全体の利益という観点から説得していくしかない」とBPRを進める難しさについて語った。

 岩手県地域振興部 情報システム課課長の高前田寿幸氏は、「BPRの必要性は高いと認識している。庁内で部局横断的なプロジェクトチームを作り、業務改革の検討を始めたところだ。これは知事から降りてきたプロジェクトであり、総務部次長が責任者となっている」と報告した。

  このように、この「とりまとめセッション」は、ただ単に「パネリストが意見を言い、他の参加者は聞いているというだけ」というスタイルではなく、参加者による活発な意見交換が行われたことが印象的だった。今後の自治体間交流につながっていくきっかけの一つとなれば、今回の会議の意義はさらに増すだろう。

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