【基調講演1】「米国における州CIOの役割」
トム・C・ルーベル
全米知事会(NGA) 州情報化プログラムディレクター

トム・C・ルーベル氏

トム・C・ルーベル氏

 最初の基調講演は、全米知事会(NASCIO)の州情報化プログラムディレクターであるトム・C・ルーベル氏だった。演題の通り、米国における州CIOの役割について解説した。

 ルーベル氏によると、「米国では多くの州のCIOは知事が任命し、知事のために仕事をするという形になっている」とのこと。また民間の場合、CIOは「技術的専門職 → データセンター責任者 → 財務部門の管理も兼任 → CIO → 場合によっては取締役またはCEO」といった具合に地位をアップさせてきたが、州政府では約10年程度遅れる形で同様の流れが生じきているとしており、自治体CIOの地位は向上しつつあるようだ。

 続けてルーベル氏は、「ITは行政サービスをさらに拡大することができるだけでなく、9.11以降は国土安全保障の観点からも重要性な役割を果たすようになっている」と説明した上で、「州知事は、より強力なCIOを必要している」と強調。2002年の全米知事選挙では24の州で新知事が誕生し、それに伴って多くの州でCIOの交代が進んでおり、「州知事(または州政府)からの支援が大きく、かつ州政府へ強い影響力を持つ“戦略的CIO”が今後増えていく」と予測している。

 「すなわち“戦略的CIO”とは、知事やCFO(最高財務責任者)、CAO(最高行政責任者)に直接報告をすることのできる立場にある」ルーベル氏は、ガートナー・グループの定義を引用しながら説明した。“戦略的CIO”とは、「コンピュータ関連、通信関連事業の管理」「州政府のIT関連の構造(青写真)や基準の設定および施行」「州政府Webサイト/ポータルサイトの管理」「IT関連プロジェクトの管理統括」といった権限を持つという。 (文:山田 哲也(イデア・ビレッジ))

■経済開発からテレビの広報番組まで権限を持つ米国の州CIO

 さらにルーベル氏は、各州政府がCIOにどれだけの分野で権限を付与しているかの具体的なデータを挙げた。

 経済開発(新規事業開発、新規人材開発など)については12州のCIOが、情報システムの統合(州内/州政府間)については43州のCIOが、そして技術革新/研究については39州のCIOが責任を担っているという。そのほか、遠隔医療サービス(19州)、司法分野のIT(12州)、立法分野のIT(19州)、公立大学(25州)、テレビの広報番組(5州)などについての責任を担っているCIOもいる。

 では、どのような人物が州のCIOに任命されるのだろうか。米国では、多くのCIOは民間から州政府へと移籍して来るとルーベル氏はいう。ITコンサルティング会社や、企業内のIT管理、業務プロセス改革の経験者などだ。連邦政府、州政府内部から招かれた人もいるが、州警察や州裁判所といったIT分野に限らない新分野の出身者もいる。

 最後にルーベル氏は、「今後は知事のCIOへの依存度がますますアップするであろう」と繰り返して基調講演を結んだ。「すべての知事は、公共の安全性、教育の改善、新規事業・雇用・経済開発、生活水準向上、環境、家庭、健康を確保することなど、様々な事業のゴールを持っている。州のCIOは、知事のゴールを達成するための役割を担う」という。つまり「CIOの任命は、これらのゴールを実行するための人事である」(ルーベル氏)と語った。

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