パネルディスカッション
「住民が使いやすい効率的なサイト運営の取り組み」

【参加自治体】
・北海道長沼町 企画振興課長
 情報技術推進室長 小西教夫氏
・新潟県柏崎市 総合企画部
 情報化総合戦略室 主任 植木馨氏
・山口県下関市 総合政策部情報政策課
 IT推進室 主任 岡部勇人氏
【モデレータ】
日経パソコン副編集長  中野淳
北海道長沼町
長沼町
新潟県柏崎市柏崎市 山口県下関市下関市

──住民にとって使いやすいWebサイトを効率的に作る方法の一つとして、CMS(コンテンツ・マネジメント・システム。Webコンテンツを効率的に管理するシステム)の活用があります。

植木馨氏
新潟県柏崎市
総合企画部
情報化総合戦略室
主任
植木馨氏
岡部勇人氏
山口県下関市
総合政策部情報政策課
IT推進室主任
岡部勇人氏

植木馨(新潟県柏崎市総合企画部情報化総合戦略室主任)
 従来は、情報化総合戦略室で掲載するコンテンツを取りまとめてWebサイトで公開していました。CMSの導入を機に、それを所属長の決裁で部署ごとに公開する方法に変更しました。このとき各部署の業務が増えることになるので、 各所属長の理解を得なければなりません。これが最初の障壁でした。しかし、「職員一人ひとりが柏崎市のスポークスマン、そして広報公聴係」というスローガンの下、前市長のトップダウンでCMSを導入したこともありなんとか説得できました。

岡部勇人(山口県下関市総合政策部情報政策課IT推進室主任)
 下関市では2001年度に、一つのコンテンツを複数のジャンルに登録できるCMSを導入しました。例えば「ファミリーサポートセンター」というコンテンツに対しては、「生活情報>対象者>子ども」や「組織別>こども課」など、四つの入り口から情報にたどり着けるようにしています。

■すべてをCMSでカバーできるわけではない

 ただし、必ずしもCMSだけで全ページを制作しているわけではありません。機械的にWebページを作成・公開できる部分はCMSですべてまかなえますが、どうしても見栄えの部分で限界があります。画像を多く表示したい場合などは、事前に配布された「標準HTMLフォーマット」を使って、各課が手作業で作成・公開する方式を採用しました。アクセシビリティのチェックも各課の職員が担当します。チェック・ツールやチェック・シートを使った確認と、実際に複数種類のブラウザーに表示させる確認を行います。その後、テキストの音声読み上げソフトやMacintoshパソコンを使う環境での確認は広報公聴課が担当します。

植木(柏崎市) 見栄えという点に関しては、職員から、「他の自治体に比べてテキスト主体のWebページなので地味だ」という不満の声があがりました。そこで、意見を寄せてきた職員に対し、WebアクセシビリティにCMSで自動的に対応できることなど、効率化についてその都度説明して、画面の見栄えを犠牲にしている部分があることを納得してもらっています。

小西教夫氏
北海道長沼町
企画振興課長
情報技術推進室長
小西教夫氏

小西教夫(北海道長沼町企画振興課長情報技術推進室長)
 長沼町では管理効率を考えCMS導入を検討していますが、まだ導入はしていません。

 現状、迅速に情報を発信する必要がある一方で、すべての職員がアクセシビリティを意識したコンテンツを作れるわけではありません。このため、Webサイトの「長沼町のおしらせ」はすべてテキスト表記としました。「機種依存文字は使わない」といった簡単なルールにだけ従ってもらうことでアクセシビリティを確保する“割り切ったスタンス”です。

──現在集計中のe-都市ランキング2005(※注1)の途中結果では「アクセシビリティを高めるためのユーザーによる実地テスト」を実施している自治体は4.2%と低い結果でした。

(※注1)「e-都市ランキング」とは、『日経パソコン』が市町村を対象に情報化の進展度を調査し、比較結果をまとめたもの。2005年の調査結果は今夏発行の『日経パソコン』に掲載する。2004年は2619団体から回答を得た。

植木(柏崎市) 柏崎市では全盲の方を対象にアクセシビリティの実地テストを行いましたが、全盲の方はマウスを使った操作が難しいこともあり、評価は高くはありませんでした。今後はさらに、弱視や高齢者の方も対象にテストを実施できればと考えています。

 また、市の「市政eモニター」という制度を活用して、健常者を対象にWebサイトのユーザビリティ(使い勝手)のアンケート調査を行いました。市のトップページの左側に、アクセシビリティを考慮して多くのメニューを用意したのですが、これが逆に多すぎて分かりにくいのではないかという指摘がありました。そこで、メニューのボタンについては、「よく使われる情報はトップページ左上の目立つ場所に掲載し、あまり使われない情報は大きなカテゴリーにまとめて整理する」というように改善しました。

──昨年多発した災害の情報発信では、自治体のWebサイトの重要性が再認識されました(※注2)。今年度のe-都市ランキングの途中経過集計では、「なんらかの防災情報を発信している」という自治体が52.4%、「防災関係のメール配信」を行っている自治体が9.2%でした。裏返せば、約半分の自治体は防災に関する情報を出していません。

(※注2)参考記事「新潟県中越地震発生後、自治体サイトは何をどう伝えたか」
http://itpro.nikkeibp.co.jp/free/NGT/govtech/20050415/
159411/
)。

植木(柏崎市) 柏崎市では昨年度、大雨と地震の二つの災害に見舞われました。10月の新潟県中越地震では、市のWebサイトにアクセスが集中してWebサーバーがダウンしてしまいましたが、すぐに復旧させて、さらに災害情報を即時掲載できるよう、CMSでトップページを急遽災害用に切り替え、時系列で災害情報をテキストで表示しました。