主催者講演
日経パソコン「e都市ランキング 2005」中間報告

日経パソコン編集長
藤田憲治

藤田憲治
日経パソコン編集長
藤田憲治

 続いてのセッションは日経パソコン編集長の藤田憲治による主催者講演「e都市ランキング2005」中間報告。

 今年度のランキングは昨年度の評価ポイントである

  • インターネットでの情報とサービスの提供(40点満点)
  • アクセシビリティ(10点満点)
  • セキュリティ(15点満点)
  • 庁内の情報化(15点満点)
  • 情報化政策(20点満点)

の5項目を踏襲しつつ設問を拡充。特に「セキュリティ」分野を強化したことを補足した。

 昨年度(2004年)の結果からは、「8位に人口1万3千人の北海道長沼町と、人口3万4千人の埼玉県宮代町が同点で入っていることからも、必ずしも自治体規模に左右されたランキングでない」という点、「自治体規模にかかわらずアクセシビリティの点が低い」という点を特徴として指摘した。

 続いて、「セキュリティにしろ情報化にしろ、高度でコストがかかるものを導入していることが高評価につながるわけではない」ことを強調。誰でもできる単純なことで、住民に利便性が高いかどうかを調査の対象としているとした。その例として、「申請書のダウンロードページのダウンロードのボタンの横に、その申請書の記入例を置いている」「申請に必要な言葉を、ヘルプとして掲載」といった、ちょっとした気配りで住民満足を向上させることができる例を挙げた。

 今回重視している「セキュリティ対策」については、昨年のランキングで1位だった藤沢市で実施している「パソコンセキュリティ実態調査」の事例を紹介した。藤沢市ではセキュリティ対策の運用を継続的に進めるために、「個人持ち込みのPCでない」「ワイヤーロックがされている」「「業務と関係ないソフトがインストールされていない」など13項目の調査を抜き打ちで行っていることを紹介し、2003年6月時点で、個人情報を保存していたPCが約10%あったものが、1年後には3.2%に減少したという効果も報告した。この藤沢市の例も、コストをかけずに実行できる対策として評価しているということを補足した。

 もう一つのポイントである「アクセシビリティ」では、全庁でWebサイトを統一管理するWebガバナンスが必要という点を強調。部局ごとに体裁などが異なると、住民にとっては使い勝手が悪くなるという点からも、Webガバナンスの重要性を説いた。

 続いて、実際にe都市ランキング作成に携わっている『日経パソコン』記者の小野口哲から、5月6日到着分までのアンケートを集計した中間報告がなされた。

 「Webサイトを通した情報・サービスの提供」に関しては、「市町村の概要」「各種申請書類のダウンロード」など、あらゆる質問項目で、昨年度よりも高い実施率となっており、Webによる情報・サービス提供の拡大が進んでいることを指摘。また、「公的機関・団体へのリンク」については高い実施率であったが、「都道府県の防災情報」「公益企業」へのリンクなどは、また実施率が低い点を指摘した。

 セキュリティについては、個人パソコンの持ち込みを禁止している自治体が昨年の42.8%から49.8%へとアップしていることを引き合いに「昨年よりも情報漏洩対策の意識は高まっているが、それでもまだ半分の自治体ではパソコンの持ち込みが野放しになっている」と指摘。セキュリティ監査については、町に比べて村の方が実施率は高いことに着目し「今後、取材を通して明らかにしたい」としながらも、規模が小さい村の方が、監査を行いやすいのではないかと考察した。

 アクセシビリティに関しても、アクセシビリティ・ガイドラインの策定が、昨年度の8.0%から13.1%へと、確かに増えてはいるのだが、言い換えれば9割弱の自治体ではまだということになる点に触れ、総じて「昨年よりも対策は進んでいるが、まだ不十分」という傾向を指摘した。

 今年度、新たに設置した質問項目である「CMSの導入」は、9.3%、「RSSリーダーへの対応」については現段階では1.9%の実施率だったことを紹介。CMS導入については、導入コストもかかり(例として挙げた藤沢市では年間300万円のソフト使用料)、現状のコンテンツからの以降にも費用がかかることがネックであると補足した。RSSリーダーへの対応については、「常時、自治体のサイトを閲覧しているわけではない住民にも情報収集がしやすくなる」というメリットを挙げた。

 続いて、同じく『日経パソコン』記者の高田学也は、電子申請についてのアンケート集計を中間報告。

 各種行政手続きの電子申請については、「2005年5月時点で開始済み(26.3%)」「2005年度中に始める(7.9%)」「2006年度には始めたい(21.1%)」を合わせると、約55%の自治体が来年度までにスタートと回答し、インターネット経由の電子申請が本格化しつつある点を指摘した。

 具体的に提供されているメニューの上位6項目は以下の通りだった。

  • 公共施設の予約
  • 住民票の写しの交付
  • 納税証明書の交付
  • 犬の死亡の届け出
  • 住民票交付の予約
  • 水道開通/停止の届け出

 「電子申請を本格的に普及させる課題とは?(推進すべきか同化判断するポイント)」については、実に8割の自治体から「住民のニーズ」という回答が寄せられたことに着目。「住民にとって電子申請が必要なのか」という点を悩んでいる自治体が多く、2番目に多い回答が寄せられた「費用対効果(52.9%)」と合わせ、必要なメニューかどうかの判断が問われることを指摘した。

 また「手数料納付の容易さ(34.1%)」については「ホームページから申請を行えても、手数料納付で窓口に出向くことを前提にしているサービスが多い」ことを指摘。オンラインで決済ができるかどうかが、電子申請普及のポイントともなるという考えを示した。

 なお、e都市ランキングの最終集計結果は、2005年夏の『日経パソコン』誌上で公表される。