都道府県庁サイトの9割近くが、トップページのテキストの文字サイズをパーセント指定やサイズ指定など、相対的に指定していた。これなら多くのブラウザーで、テキストの文字サイズを大きくも小さくも変えられる。お年寄りや視覚に障害のあるインターネット・ユーザーにとっては、非常にありがたい。

 企業サイトでもアクセシビリティが重視されるようになってきたが、官公庁・自治体のサイトは特に、万人に使ってもらえる環境を用意することが求められる。バリアフリーなサイトにするための方法については、JIS化の動きも見える。フレームが使えないブラウザーでもサイトを見ることができるか、色覚に障害があってもテキストや画像は見易いか、マウスを使わなくてもサイトを利用できるかなど、さまざまなポイントをチェックし、不都合は修正していく必要がある。

■文字サイズは固定しない ~可能なら多くのブラウザーでチェックを~

 前回はトップページのサイズについて書いたが、今回は誰もが使いやすいページを作る要素の一つである文字サイズについて少し考えてみる。

 このコラムの第1回目で書いたように、画像への属性の設定がサイトのバリアフリー化への第一歩なら、テキストの文字サイズを自由に変えられるかどうかが第二ステップだと思う。


島根県ホームページへ
文字サイズの変更方法などを説明するページを用意する自治体サイトも増えてきた(画像は島根県の例)。
 一部の道府県では、トップページのテキストの文字サイズが固定されていて大きさを変えられなかった。北海道秋田県宮城県京都府のサイトでは、トップページ上で大きさを変えられる文字がない。茨城県も、ほとんどのテキストでサイズを変えることができなかった。

 ブラウザーでの文字サイズを絶対値で指定せず、相対的な指定にすれば、例えばマイクロソフトのInternet Explorerなら、「表示(V)」メニューから「文字サイズ」を選ぶと、「最大(G)」から「最小(A)」まで5段階に文字サイズを変えられることが多い。スタイルシートの指定でいえば、mm(ミリメートル)、in(インチ)、pt(ポイント)、px(ピクセル)などの絶対値による指定ではなく、em(大文字の「M」の高さを基準としたサイズ指定)、ex(小文字の「x」の高さを基準としたサイズ指定)、%(パーセント)、キーワード指定(xx-smallからxx-largeまでの7段階)といった相対値により文字サイズを指定したい。あるいは、まったく文字サイズ指定をしないのも一つの方法だ。

 ここで“(フォントサイズを)変えられることが多い”と、歯にものがはさまったような言い方をしているのは、ブラウザーやバージョンによって、表示サイズは微妙に異なるためだ。サイズ変更そのものができたりできなかったりすることまであるという。ブラウザーごと、バージョンごとにフォントサイズのテストを行った結果は、ウェブ上にいくつか挙げられている。その多くが個人のページなのであえてURLを紹介しないが、可能ならできるだけ多くのブラウザー、多くのバージョンで文字サイズの表示をチェックしたいところだ。

■画像に書かれた文字サイズにも配慮が必要

 
 テキストには配慮していても、画像への配慮がないサイトも問題だ。

 例えば東京都のホームページを見てみよう。ヘッダーのナビゲーションバーには非常に小さな文字で都庁の所在地と連絡先がに書かれている。その下の「都議会」「都政Q&A」「資格・試験」「東京観光」などのリンク、画面左側で縦に並ぶ「サイトマップ」「使い方ヘルプ」「文字を大きく」などのリンクボタンも、かなり小さい文字で並んでいる。これらは画像で作られているので、もちろんサイズを変更することはできない。「文字を大きく」というボタンが、小さな文字で高齢者にとって読みにくくては笑えない。

 青森県のトップページでも同様のことが見受けられた。ヘッダ部分に、やや小さ目の文字で県庁の住所と電話番号が書かれている。やはりこれは画像データなので、サイズを変更することができない。同じページ内のテキストはビジターのニーズに合わせて大きさを変えられるし、ほかの画像の文字は大きく書かれている。県庁の住所のすぐ下に「文字を大きくしたい方へ」という説明に飛ぶリンクが用意されているだけに残念だ。

 ほかにも外国語ページへのリンクボタンや、情報カテゴリーの見出しを画像で作成しているために、サイズを変更することができない自治体サイトの例は数多くあった。

 文字サイズを固定するのは、ページのデザインを重視しているせいでもあるのだろう。細部にわたってデザインを考え抜いたデザイナーにとっては、せっかくの努力を壊すようなことはして欲しくないことも理解できる。しかしウェブサイトは、目的があって訪れるユーザーがあって初めて成り立つ情報媒体である。画面の美しさを追求することも大切だがそれ以前にまず、利用者の便宜をはかるべきではないだろうか。

 米国のリハビリテーション法508条サイトのように、フォントやサイズの選択肢を大幅に広げろとまでは言わない。ウェブサイトを楽しく使ってもらうためには、多少は装飾的な要素も必要だから、画像に文字を埋め込むなとも言わない。しかし画像中に文字をはめ込みたい場合、視認性を考えると通常のモニターで少なくとも9pt相当より大きなサイズにしたいところだ。


古賀氏写真 筆者紹介 古賀雅隆(こが・まさたか)

日経BPコンサルティング調査第三部チーフコンサルタント。官公庁、企業のウェブサイトのユーザビリティ、アクセシビリティに関するコンサルティングを手掛けている。『ネット広告ソリューション』(日経BP社)、『戦略ウェブサイト構築法』(日経BP社)などインターネットの戦略的活用法についての書籍やCD-ROMの編集も担当。