●今回は「未来の電子自治体論」の後半部分を取り上げる。前回、未来の電子自治体論として「ビジネスサポート型」と「観光イベント型」を提示し、コミュニティを創造し、持続させるためのビジネスモデルを掲げてきた。 ●後半部分では、それと同様の観点から、「癒し型」と「人材育成型」の2タイプについて取り上げてみる。 |
■癒し型 |
Q20 |
「癒し型」とは、どのような電子自治体か? |
A20 |
ユーザーの肉体と精神の休息と充電を図り、その先にある新たな価値観の発見を裏側から巧みにサポートする場 |
「癒し型」とは名前が示す通り、“癒しの場”を提供することを戦略として掲げる電子自治体である。肉体と精神の休息と充電を図り、その先にある新たな価値観の発見を求め、顧客が滞在することをサポートする。「癒し型」の電子自治体とは、言い換えれば「何もしない状況」「何もない状況」をいかに作り上げるかが、大きなポイントなのだ。ここでは、過剰なまでのいたれりつくせりのサポートやサービスではなく、つかず離れずの、存在を意識させないような対応が求められよう。 世界的に有名な観光地の多くでも、観光ビジネスに従事する人達には家族がいて、子供がおり、教育の場としての学校などが存在し、生活があるはずだが、そうした生活臭を表に出さない。観光客が入ってくる可能性のある「動線」上にはそうした生活の場を配置しない工夫がなされている。あるいは、小さい頃から、観光で生きていることを子供達に知らしめ、観光客は“侵入者”ではなく、大事な“顧客”であることを教え込む。コミュニティ内部の人々が癒しの演出に参加し、効果を高めることが、癒し型の「肝」である。 これまで、コミュニティの多くが「観光イベント型」を模索してきたが、日本の観光資源の大部分はむしろ「癒し型」であることを意識し、基本機能の獲得に動きたいものだ。
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筆者紹介 林志行(りん・しこう) 日本総合研究所研究事業本部・主任研究員。日興證券投資工学研究所を経て1990年より現職。企業のウェブ事情、インターネットを利用したマーケティング戦略に詳しい経営戦略コンサルタント。近著に『中国・アジアビジネス WTO後の企業戦略』(毎日新聞社)、『インターネット企業戦略』(東洋経済新報社)など。個人ホームページ「Lin's Bar」に過去の連載などを掲載。 |